世界の結核対策の状況−WHO

173カ国が回答したWHOの結核に関する調査によれば、1997年に届出られた結核患者数は合計3,368,879人(人口10万対58)であった。このうち1,292,884人(38%)は喀痰塗抹陽性だった。1997年の結核患者総数は、前年の3,805,063人に比べ12%少ないが、報告の遅れが影響していると考えられている。WHO南東アジア地域と西太平洋地域からの報告が、患者総数の64%、喀痰塗抹陽性患者数の57%を占めた。

1997年の患者総数の42%は、DOTS(短期化学療法による直接監視下治療:WHOの推奨するDOTS戦略は、有症者の喀痰塗抹検査による患者発見なども含めた総合的な対策を言う)を実施している地域から報告された。診断精度を示す、塗抹陽性者の患者全体に占める割合は、DOTS実施地域では55%(45〜60%)だったが、DOTS未実施地域では31%だった。また、肺結核新規患者に占める喀痰塗抹陽性患者の割合は、DOTS実施地域で65%(55〜70%)、未実施地域で35%だった。

DOTS実施地域における塗抹陽性患者報告は、1994〜95年、1995〜96年、1996〜97年にそれぞれ127,850件、116,462件、54,658件増加した。DOTS実施地域における患者総数の報告は、1995〜96年、1996〜97年にそれぞれ191,504件、104,329件増加した。

届け出られた結核患者は、実際の患者総数の約19%と推定され、推計患者総数は約8百万人とされている。また、新たに塗抹陽性と届け出られた患者は、実際の35%と推定され、推計塗抹陽性患者数は350万人を超える。推計患者総数の12%、推計塗抹陽性患者数の16%は、DOTS実施地域で発見されている。

DOTS実施地域では、1996年に461,149人の新規喀痰塗抹陽性患者が治療対象として登録され、このうち92%について治療結果が評価された。登録患者の72%が治癒し、さらに6.8%は治癒については不明だが治療を終了していた。したがって両者を加えた治療成功率は78%だった。一方、DOTS未実施地域では、758,456人の新規喀痰塗抹陽性患者が登録されたが、治療の評価が行われたのは49%のみだった。登録患者の17%が治癒し、さらに22%は治療を終了した。治療成功率は39%だった。

患者登録からのデータを報告した62カ国のうち、41カ国は1995〜96年の間により高い治療成功率を示した。また32カ国は、治療成功率を70%以上に維持しながらDOTS実施地域での患者発見を1%以上増加させた。

(WHO、WER、74、No.27、217、1999)

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