Vero毒素産生性大腸菌O103:H2による家族内感染例−静岡県

静岡県内Y市在住の女性(18歳)が急性胃腸炎(発熱38℃、血便、下痢)の症状を呈し、8月16日に病院を受診した。

腸管出血性大腸菌感染が疑われたので、病院検査室では糞便を検体としてオーソVT1/2(Ortho Clinical Diagnostics社)による検査を実施した結果、Vero毒素陽性となった。さらに、分離された大腸菌の血清型別検査を実施したが、市販の病原大腸菌免疫血清(デンカ生研)の混合血清(混合1〜8)に凝集が見られず、型別ができなかった。そこで、当研究所にVero毒素型別および血清型別検査の依頼があった。

当研究所の検査で、当該大腸菌のVero毒素型別は、RPLA法(デンカ生研)およびPCR法(宝酒造)によりVT1産生であることが判明した。

また、血清型別は、病院検査室の検査と同様に市販の病原大腸菌免疫血清の混合血清には明らかな凝集が見られなかったので、国立感染症研究所細菌部から分与された病原大腸菌免疫血清(混合血清O74、O103、O161、O165)を用いて検査をしたところ、混合血清に明らかな凝集が見られ、さらに、O103にも凝集が見られた。続いて常法によりH抗原について検査したところ、血清型はO103:H2 であることが判明した。

関連調査として家族(2名)の検便を実施したところ、母親(無症状)から同一性状のO103:H2が検出され、家族内感染例であることが確認された。

わが国における下痢症患者からのVero毒素産生性大腸菌(VTEC)O103:H2 の分離報告は少ない。本誌での報告は秋田県(1996年、本情報Vol.18、No.6参照)と青森県(1997年、本月報Vol.18、No.7参照)の事例に続いて3番目と考えられる。また、中沢らや多田らは牛糞便からVTEC O103:H2を分離しており、国内に浸淫していることを指摘している。

今回の事例では、国立感染症研究所細菌部から分与された病原大腸菌免疫血清により血清型別できたが、今後、頻繁に分離されるVTEC O157:H7、O157:H-、O26:H11、O26:H-、O111:H-以外に、O103:H2のような新しい血清型のVTECについても検査できる体制を早急に整えることが望まれる。

静岡県環境衛生科学研究所
増田高志 三輪憲永 川村朝子 秋山眞人

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