MRSA市中感染による乳幼児の4死亡症例、1997〜1999年−米国

症例1:1997年7月、ミネソタ州都市部に住む7歳の黒人少女が、39.5℃の熱発と右鼠径部痛を主訴に、3次救急病院を受診した。細菌性右股関節炎の診断により外科的ドレナージを受けたが、血液と関節液よりメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が分離されたため、第3入院日に抗生剤がセファゾリンからバンコマイシンに変更された。同日、他方の股関節のドレナージも行われたが、呼吸不全のため、人工呼吸器管理となった。ARDS、肺炎、膿胸をきたし、肺出血のため入院5週目に死亡した。剖検により、両側に膿瘍を伴う肺炎が確認された。患者に、最近の入院歴はなかった。

症例2:1998年1月、ノースダコタ州郊外に住むインディアンの16カ月の女児が、ショックと40.6℃の熱発、痙攣、びまん性点状出血、易痙攣発作により、地域病院に入院した。呼吸不全と心停止をきたし、2時間後に死亡した。死亡直後に採られた血液と髄液からMRSAが分離された。病理では、脳、心臓、肝臓、腎臓に多数の微小膿瘍が見られた。1カ月前に、中耳炎の治療目的でアモキシシリンが投与されていたが、1年以内の患者、患者家族の入院歴はなかった。

症例3:1999年1月、ミネソタ州郊外に住む13歳の白人少女が、発熱、血痰、呼吸困難のため、地域病院に入院した。この前日、痰を伴う咳と下唇に2cmの紫斑が認められていた。左下肺肺炎、胸水貯留をみとめた。入院5時間後に血圧が低下、小児病院に搬送され、挿管されたが、呼吸状態は悪化し、第7入院日に脳浮腫と多臓器不全により死亡した。血液、喀痰、胸水よりMRSAが分離された。病理所見は、硬化を伴う左肺の出血性壊死であった。患者に基礎疾患はなく、最近の入院歴もなかった。

症例4:1999年2月、ノースダコタ州郊外に住む12カ月の白人男児が、気管支炎、嘔吐、脱水のため、3次救急病院に入院した。入院時40.6℃の発熱と、点状出血、右肺の肺炎レントゲン所見が見られた。翌日に右大量胸水がみつかり、ICUに入室、ドレインチューブが挿入された。重度の呼吸困難とショックにより、第3入院日に死亡した。入院時の血液培養は陰性であったが、胸水と死後採られた血液よりMRSAが分離された。病理では、高度の出血を伴う壊死性肺炎と多数のグラム陽性球菌が右肺に見れらた。患者は出生以来、入院歴はなく、基礎疾患も見られなかった。患者の2歳の姉が、3週間前にMRSAによる臀部感染の治療を受けていた。死亡男児由来のMRSAと、その姉由来のMRSAは抗生剤の感受性パターンが同一であった。

症例1と症例4由来のMRSAのPFGEパターンは同一であり、症例2と症例3由来のMRSAのPFGEパターンは、これから2本と3本の違いが見られた。このことは、4株のMRSAの由来が同一である可能性を示している。どの株もTSST-1を産生しなかった。ミネソタ州とノースダコタ州は、アメリカ北部で互いに隣接している州である。

(CDC、MMWR、48、No.32、707、1999)

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