オフシーズンにおけるカリシウイルス(SRSV)による食中毒−福岡市

今回、カキのオフシーズンである6月上旬に福岡市内で発生した食中毒患者から、カリシウイルス(SRSV)が検出されたので報告する。

6月1日22時〜2日11時にかけて、市内下宿施設同居の学生34名中14名が嘔吐・下痢等の食中毒様症状を訴え、うち数名は病院を受診した。患者は18〜22歳の男性で、聞き取り調査を行った14名の内訳は、嘔吐9名(平均 2.6回/日)、下痢9名(平均 2.3回/日:全員水様性)、発熱4名(平均37.8℃)、嘔気6名、頭痛5名、腹痛が2名であった。

東区保健所の調査によれば、調理従業者のうち1名が5月23〜26日に下痢・嘔吐の症状を呈しており、5月31日には盛りつけを行っていたが、事件発生時の従業員の糞便が入手できなかったため、事件との関連性は確認できなかった。また、6月1日夕食残品のバンバンジー、ハヤシライスのルー、マカロニサラダからは原因物質は検出されず、発症者の喫食調査においても原因食品等は推定できなかった。

患者便6検体の検査は、プロメガ社のRNA抽出キットで抽出後RT-PCR法で行った。プライマーは1st 35'/36・2nd NV、SM81/82、および1st Yuri52F/R・2nd Yuri22F/Rの2セットを用いた。35'/36系では6検体中3例、Yuri系では6検体すべて330および370bpの位置ににバンドが確認された。マイクロハイブリダイゼーション法ではプローブタイプが確認できなかったため、国立公衆衛生院にシークエンスを依頼した結果、2nd産物6検体ともgenogroup IIで、互いに非常に近いものであった。電子顕微鏡でウイルスは確認できなかった。

福岡市保健環境研究所微生物課ウイルス検査担当

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