ドイツにおける旋毛虫集団感染、1998〜99年

ドイツ疫学調査組織によると、北ライン・ウエストファーリア州の10市・1行政区で1998年11月〜1999年1月に52名の旋毛虫症患者(抗体陽性者)が確認された。同時期に2件の集団感染が発生したもので、1件はA社製のソーセージ、他はBスーパーの挽き肉が原因食と推定された。目下のところ両事例の関連性は不明である。ちなみに、ドイツ全土における過去10年間の発生状況は年間0〜10例程度である。また、1937年以降ドイツでは豚肉の旋毛虫検査が義務づけられてきた。近年は、年間約4千万頭の屠殺豚のうち陽性例は3頭以下ときわめて少ない状況で推移してきた。そのため、全屠体を対象とした検査の必要性について論議を呼んでいるところでもあった。

A社製ソーセージの喫食に起因した事例では、同州の10市にまたがって44名の患者が確認された。そのうちの38名は1998年10〜12月の発症で、主症状は筋肉痛、発熱、頭痛、下痢および顔面浮腫であった。うち32名が加療、15名が入院(平均13日間)となった。A社製ソーセージの原料はベルギーおよびドイツ産の冷凍肉とスペイン産の生肉(頚部の肉)であったが、原料、製品とも当時の検体が入手不可能であったために寄生虫検査は行えなかった。一方、挽き肉による事例では8名の患者のうち7名が1998年11月中の発症で、入院例は無かった。この事例では患者宅に冷凍保存されていた挽き肉1検体から旋毛虫の幼虫が検出されている。挽き肉の原材料はドイツ、ベルギー、およびオランダ産の豚肉で、およそ40軒の生産農家がその系列下にあった。

旋毛虫症の症状は多彩で、不顕性感染から死亡まで多様である。また、ケース・スタディの陰性対象者から2名の患者が確認されたことなどから、真の患者数は今回の報告に留まらない可能性がある。本事例では自国を含む数カ国の輸入豚肉を原材料とした食品が原因食となって広域に流通しているが、食品生産システムの近代化・大量化によって集団感染の形態が局所的からdiffuse outbreakへ変容を遂げつつある典型例と言える。
(CDC、MMWR、48、No.23、488、1999)

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る