イカ菓子による全国的サモネラ流行がSalmonella OranienburgとSalmonella Chesterとの混合感染である確証−兵庫県

本年(1999年)初頭から全国を席巻した、イカ菓子を原因とするSalmonella Oranienburg(SO)流行も、厚生省により1999年5月17日をもって終息宣言がなされた。既に、厚生省食品保健課通知(1999年4月16日および4月30日)により示唆されるところではあるが、我々は以下に、イカ菓子による本流行がS. Chester(SC)との混合流行であることを明確にした。

SO流行初期から最盛期、すなわち1999年1月〜3月に、姫路市内某小児科医院から当研究所に搬入された小児下痢症(発症は1998年12月20日〜1999年3月5日)の糞便7件からSO2例、SC5例が分離された。SOは同時期に県下の他地域(淡路島全域)でも流行していたので、我々はSOによる県下集団感染症としての認識を示した(本月報Vol.20、No.4、p.87、1999参照)。しかし、SCについては明確な解釈ができなかった。

しかるに、(1)4月中旬におやつちんみを食した4歳男児(県下多可郡中町)からSCが分離され、(2)上記医院から搬入されたその後(1999年4〜5月)の糞便からSCおよび/あるいはSO5例(発症は1999年2月26日〜5月13日)が分離され、うち3例からSC、SO両サルモネラが同時に分離された(うち1例は4月中旬頃おやつちんみを喫食)。これらのことから我々は、イカ菓子による全国的サルモネラ流行は、SOおよびSCの混合感染ではないかと推測した。

そこで当所にて、市販のおやつちんみ6ロットからのSC分離を試み、5ロットから同菌型を分離した。同時にSOはすべてのロットから分離されたが、SCは通常の方法(セレナイト系培地による増菌後、選択平板にて分離)で分離できたのは1ロットのみで、他の4ロットは、H−G抗血清存在下のSIM 培地にて相誘導の方法でSCを選択し分離できた。これらの当所SC分離株は、ヒト由来株とともに、すべてリジン脱炭酸陰性であった。さらに県下ヒト由来、食品由来のSCについてその遺伝学的差異を調べるため、それぞれ8株、3株を選んでBln IによるDNA切断産物のパルスフィールドゲル電気泳動を実施した。SOについても同様、ヒト、食品由来各1株を泳動した(図1)。SO、SCそれぞれ、すべてそのパターンが同一であることから、これらの菌株は遺伝学的に同一であると考えられた。このことから、すでに述べた事実(1)、(2)とともに、本食中毒がSOおよびSCの混合感染であることが明確に示された。

本流行にSCが関与しているとの認識が全国的に遅れたことは、上に述ベたように、イカ菓子中のSC/SOの存在比率(=分離率)によると思われるが(上記厚生省通知による食品からのSC分離は、青森県、愛知県、広島市のみ)、ヒトからの分離を含めて、本流行のSC菌株がリジン陰性であったことが、各研究室・検査室におけるSC低分離率の原因であるとも考えられる。

兵庫県立衛生研究所微生物部
辻 英高 浜田耕吉 増田邦義

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