青森県における腸炎ビブリオ患者発生動向について

青森県における腸炎ビブリオ食中毒の発生件数は、1996年に39件の食中毒中19件、1997年には41件中24件、そして1998年には32件中20件あり、その原因菌の血清型の多くはO3:K6(耐熱性溶血毒産生陽性:TDH+)である。この血清型菌は1994年に突然に出現し、1997年と1998年にはすべての事件に本血清型菌が関与した。こうした中で昨年夏、一河川の河口が血清型O3:K6(TDH+)菌に汚染されていた事実が判明したのでその概要と、病原微生物検出情報(月報)をもとにした腸炎ビブリオ検出状況を解析する。

青森県内のN町を中心に1998年6月26日(金)ごろから家庭における血清型O3:K6(TDH+)の腸炎ビブリオ食中毒が発生していることが、30日(月)、保健所への届出から判明した。患者はN町周辺の海域で採取された魚介類を喫食していることが判明し、また、数日後、同町にあるホタテ加工施設のホタテ製品による食中毒の発生があり、使用海水(塩素入り)が当該菌に汚染されていたことが判明した。海域の汚染実態を把握するため、N町並びに類似地形の対照としてK町のそれぞれ一河川の河口とその周辺海岸を定点として海水と底泥を採取する一方、N町の海岸から100m沖合と海水温定点観測地点の海水の合計10検体について、7月14日から1週間ごとに3回にわたって腸炎ビブリオ汚染調査を実施した。増菌培養は3%食塩加ポリミキシンブイヨンを用いたMPN3本法で行い、PCR法により増菌培養液中のtdh遺伝子を検出後、TCBS寒天培地で菌分離を行った。その結果、N町の河口の底泥から2度にわたり少ない菌量ではあるがO3:K6(TDH+)の腸炎ビブリオが分離され、N町での多数の患者の発生との関連が示唆された。

近年、全国的に腸炎ビブリオ食中毒が多いといわれているが、1997年から一部の自治体では患者一人だけの届出が多くなり、以前のような食中毒の増減の判断が困難となっている。そこで、定点医療機関での腸炎ビブリオ検出状況を月報から集計したところ、青森県での検出数(患者数)は全国比で、1995年3.2%(986例中32)、1996年13%(1,028例中134)、1997年14%(2,273例中318)、1998年18%(2,301中419)と、1996年から著しい増加傾向を示していることが判明した。月報は限られた情報であるため、県の実数を正確に反映しているとはいえないが、菌分離成績に裏付けられた極めて有用な情報と考えられる。

青森県では昨年から海水温度を指標とした腸炎ビブリオ食中毒警報を出し、その発生予防に努めており、本年は6月14日に警報が発せられ、6月24日現在、いまだ患者は確認されていない。

青森県環境保健センター微生物部
大友良光 筒井理華 対馬典子 杉山 猛

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