魚介類(イカ)乾製品のSalmonella汚染−埼玉県

1999年3月、神奈川県川崎市でSalmonellaによる食中毒事件が発生し、患者はいずれも青森県で製造された「イカ乾製品」を食しており、患者および販売店より入手した同乾製品からSalmonella Oranienburgが検出された。埼玉県にはこのイカ乾製品の小分け、包装元があり、その施設で製造された製品、青森県産の原材料、他県産(輸入品含む)の原材料、施設のふきとりおよび従業員の便の検査を行った。その後、この食品が原因と思われる食中毒事件が続々と報じられ、本県も患者の調査を併せて行った。

検査方法Salmonellaの検査方法は、イカ乾製品、ふきとりについては緩衝ペプトン水(BPW)で前培養後、ラパポー卜・バシリアデス(RV)改良培地およびテトラチオネートブイヨン(TT)で選択増菌培養を行い、分離培地はSS寒天を使用した。糞便は直接SS寒天と、セレナイト培地で選択増菌後SS寒天で分離する2法を用いた。生化学性状を確認し、市販OおよびH血清でSalmonellaを型別した。

また、定性でSalmonellaが分離されたイカ乾製品4検体について、MPN5管法による定量培養を行った。さらに、本調査と川崎市でのS. Oranienburgの分離株については薬剤感受性試験(CP、SM、TC、KM、ABPC、OFLX、NA、CPFX、NFLX、FOM、STの11薬剤)を実施し、パルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)を用いての制限酵素BlnIによるDNA切断パターンの比較を行った。

成績:検査材料、検体数、Salmonella陽性数およびイカ乾製品のSalmonella MPN値を表1に示した。埼玉県には、M水産製造のイカ乾製品の小分け、包装施設が3施設(S商会、N工場、D運輸)あり、川崎市の事件の小分け包装元であるS商会を主体に検査を行った。M水産製造のイカ乾製品は3形状(四角形、短冊状、そうめん状)あるが、検査した原料および包装品のすべてからS. Oranienburgが検出された。同時にM水産製造の3形状の原料と、そうめん状の包装品から、わずかではあるが、S. Chesterが分離された。しかし、D冷蔵のイカ乾製品(そうめん状)およびD運輸の輸入原料を加工包装したものからはSalmonellaは検出されなかった。ふきとりはS商会の小分け製造ラインの2検体からS. Oranienburgが検出された。また、従業員糞便各1検体からS. OranienburgおよびS. Chesterが検出されたが、D運輸従業員糞便からはSalmonellaは検出されなかった。イカ乾製品を検体としたMPN5管法による定量培養では、試料100ml(イカ乾製品10g)のMPN値は表1のとおり49、 240、 350、 110,000(再検査中)であった。

患者については、4月の中旬の検査であるが、7事件12検体搬入されており、5検体からS. Oranienburgが検出され、7検体からはO7が検出されている(現在検査中)。

イカ乾製品、ふきとり、患者(川崎市、草加市)および従業員から分離されたS. Oranienburg菌株の薬剤感受性は11薬剤とも感受性を示し、すべて一致した。

また、制限酵素BlnI(図1)を用いてのPFGEのパターンはすべて同じであることが確認され(制限酵素XbaIについては継続実施中)、これらの菌株は同一由来であると推定された。

埼玉県衛生研究所
正木宏幸 斎藤章暢 大塚佳代子 小野一晃 濱田佳子 山口正則
大宮保健所 平井 茂

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