Salmonella Oranienburg検出数の急増について−埼玉県

埼玉県内の病院や臨床検査機関で分離され、衛生研究所において確認したS. Oranienburgの検出数は年間数例にすぎなかった。しかし、1999年に入ると、1月1例、 2月5例、 3月13例、 4月は4月26日現在で12例検出され、計31例が県内各地域で散発下痢症患者や健康保菌者から検出されている。散発下痢症患者は14例で、そのほとんどが12歳以下の小児であった。その症状は、38℃〜39℃の発熱や腹痛、下痢などで、静脈血や胆汁からの菌分離があった4例を含む7例が入院の必要な重篤な症例であった。

そこで過去に県内で分離されたS. Oranienburgと、4月12日までに搬入された23株との比較を、生化学的性状・薬剤感受性・パルスフィールドゲル電気泳動法によるDNA切断パターンを用いて行った。1999年に分離された株は2例を除き、イノシット非分解で、供試した11薬剤(CP、SM、TC、KM、ABPC、NA、SXT、FOM、CFLX、OFLX、NFLX)すべてに感受性を示した。また、BlnIおよびXbaIを用いたDNA切断パターンはすべて一致した(図1)。

3月に川崎でイカ乾製品によるものと思われる食中毒が発生した。その関連調査において、イカ乾製品からヒト分離株と同一性状、同一切断パターンのS. Oranienburgが分離されたことから、再度散発下痢症患者の聞き取り調査を行ったところ、現在判明しただけでも8名が喫食していた事実が浮かび上がった。また、イカ乾製品からは、S. Oranienburgに加え、リジン陰性のS. Chesterも分離された。散発下痢症患者の中には、イカ乾製品分離株と同一性状のS. OranienburgとS. Chesterが同時に分離された例もあった。

このため、サルモネラ複数血清型によるイカ乾製品の汚染が示唆され、S. Oranienburg検出数の急増は、汚染されたイカ乾製品を原因とするdiffuse outbreakに起因する可能性が高いと思われた。

埼玉県衛生研究所 倉園貴至 近真理奈 山口正則 正木宏幸 大関瑤子
埼玉県済生会栗橋病院    宮川三平

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