1997年つつが虫病・紅斑熱様患者集計報告

衛生微生物技術協議会検査情報委員会 つつが虫病小委員会

1997年のつつが虫病・紅斑熱様患者発生報告は、24機関から590あった(表1)。このうち陽性と診断された患者は480(血清診断429、臨床診断50、遺伝子診断1、表5参照)で、うち24は紅斑熱患者であった。1993年以降つつが虫病患者数はやや減少の傾向にあったが1997年はやや増加した。紅斑熱患者数も集計が開始された1995年が16、1996年は14、1997年は24と増加傾向にある。以下調査票に従って、つつが虫病および紅斑熱患者発生状況について解析した。

 1)つつが虫病・紅斑熱患者の地域別、月別発生状況:つつが虫病患者456、紅斑熱患者24について地域別・月別発生状況をみた(表2)。つつが虫病患者が多数報告された県は秋田、福島、群馬、千葉、大分、宮崎、鹿児島であり、千葉および九州地方での発生が多いのは例年同様である。月別発生状況をみると、5月の小さなピークは東北・北陸地方での発生、11月の大きなピークは関東以西での発生となっている。紅斑熱患者は千葉、島根、高知、鹿児島の4県から24報告された。このうち13は千葉および高知からであった。患者発生は7月をピークにつつが虫病の少ない夏場に集中している。

 2)感染推定場所、作業内容:つつが虫病では山地における森林作業および農作業、さらに平地での農作業時に感染する機会が多いが、レジャー、山菜・山芋などの採取時に感染した例もみられる。紅斑熱も山地や平地での農作業中に感染するなど、つつが虫病とほぼ同様であるが、これまでの報告では森林作業中の感染は少ないようである(表3)。

 3)性別・年齢別発生状況:つつが虫病・紅斑熱とも患者発生には性差はなく、年齢別では男女ともに60歳以上で多い。これは農作業など感染場所で作業する機会がこの年齢層で多いためと思われる( 表4)。

 4)診断法:つつが虫病では血清診断が405[間接蛍光抗体法(IF)347、免疫ペルオキシダーゼ法(IP)48、補体結合反応(CF)10]と最も多く、次いで臨床診断により届けられたもの50、遺伝子診断1であった。紅斑熱ではすべて血清診断(IF)であった(表5)。血清診断で保留77(つつが虫病、紅斑熱両検査例を含む)があるが、これは単独血清のため臨床的につつが虫病(紅斑熱)を疑いながら抗体上昇の確認が得られなかったため診断できなかったものである。つつが虫病小委員会では、このような例について、血液材料から病原体遺伝子を検出することにより確定診断できるよう研修を行っている。

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