Salmonella Infantisによる大規模食中毒−神奈川県

1998年8月21日、給食センターの同じ仕出し弁当を喫食したグループから、10名が下痢、発熱、嘔吐などの食中毒症状を呈している旨の連絡が管轄保健福祉事務所に入った。同保健福祉事務所で調査したところ、8月17日以降、同給食センターの仕出し弁当喫食者の多数が同様の食中毒症状を呈していたことが判明し、仕出し弁当を原因とする集団食中毒と断定された。その後の調査で、本事例の原因物質はSalmonella Infantisであること、また発症者が8月17〜26日の10日間続発していたことから、その間の仕出し弁当喫食者数は710名、発症者数は372名に達する同給食センターを原因施設とした大規模な事例であることが明らかになった。

仕出し弁当喫食者710名のうち、発症日が特定できた患者の発症状況は、発症日が8月17日であった者2名、以後、18日4名、19日34名、20日221名、21日55名、22日22名、23日6名、24日3名、26日1名で、発症日不定の患者を含めた総数は372名であった。患者の症状は、下痢(91%)、腹痛(82%)を主徴とし、発熱(58%)、倦怠感または脱力感(58%)、頭痛(38%)、悪寒(38%)、吐き気(22%)および嘔吐(11%)を伴い、12名が入院して治療を受けた。

原因物質の細菌学的検査は、17〜20日の仕出し弁当検食および食材、使用水、調理施設および調理器具のふきとり材料、患者および従業員糞便について実施した。その結果、19日の検食からセレウス菌、20日の検食と施設のふきとり材料からセレウス菌、黄色ブドウ球菌およびS.Infantisが検出され、また、従業員11名中4名、患者20名中13名からS.Infantisが検出された。

本事例では、患者の発症日から推定して19日の仕出し弁当が原因食品として強く疑われたが、17〜21日の間に19日以外の仕出し弁当を喫食して発症した患者も認められたことから、原因食品は17〜21日にかけて調理された仕出し弁当と推定された。一方、原因物質は、ふきとり材料および検食から3種類の食中毒菌が検出されたが、従業員および患者から単独かつ高率に検出されたS.Infantisであると断定された。発生要因としては、調理室の床からS.Infantisが検出されたこと、本菌の調理仕出し弁当への暴露日が数日にわたっていたと推定されることから、調理環境が本菌に汚染されていたことによるものと思われ、器具の洗浄殺菌、調理従事者の手洗いが不十分であったことなどが考えられた。さらに、給食センターでは仕出し弁当を数回に分けて調理したために、調理済食品が弁当調製時まで長時間室温放置されていたことも今回の食中毒の発生要因と推定された。

神奈川県衛生研究所細菌病理部
神奈川県秦野保健福祉事務所

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る