サウナ、排水ポンプ、冷却塔あるいは渦流浴を汚染源とするレジオネラ症の集団発生例−オランダ他

消毒が十分でない暖かい水環境からのエアロゾルによる4件のレジオネラ集団感染例をまとめた。これらの集団発生のうち、サウナおよび排水ポンプの汚染がレジオネラ肺炎の原因となった例は初めての報告である。最近は分子疫学的手法を用いて菌株の同一性が確認されているのが特徴で、文献(1) のように同一の株が長期に生存していることがわかってきた。浴槽、冷却塔の維持管理には十分に留意しなければならない。

 (1) 1996年オランダで、サウナ入浴後5日目に肺炎で入院した64歳の男性から分離されたLegionella pneumophila血清群1が、そのサウナ施設の泡足湯(air-perfused footbath)から分離されたL.pneumophilaと同一であることが、PCRにより確認された。1991〜1996年のサーベーランスデータによると5症例以上が上記のサウナ施設に関連し、うち2名が死亡していた。発端となった症例の1カ月前と14カ月前に分離された株は、足湯から分離された株と一致した。そのサウナの給湯設備で水のよどみをきたす可能性のある部分をなくしてからは、その後3カ月間に菌は検出されておらず、患者も出ていない。

 (2) 1996年9月米国ミズーリ州セントルイスの酒場で、レジオネラ肺炎3例の集団発生があった。患者からはL.pneumophila血清群1が分離された。大雨洪水があったため3日間古い排水ポンプが使用され、作動中に汚水温度が上昇してレジオネラの増殖が起きたと予想された。排水ポンプの横の小さな穴から噴出した水からエアロゾルが発生し、酒場の床の割れ目から吹き上がり、酒場の台所の排気装置で引っ張られたようだ。

 (3) 1995年7月に米国ペンシルバニアの町で病院の冷却塔を感染源とするL.pneumophila血清群1による肺炎の集団発生があった。22症例が確定され、発症患者は、発症する2週間前から病院の1,000フィート以内に住んでいた。冷却塔から分離された株は、5人の患者から分離された株とモノクローナル抗体への反応、PCR、PFGEサブタイプで一致した。レジオネラ肺炎を防ぐには冷却塔からの拡散を最小にしなければならない。

 (4) 1995年、5家族がデンマークの西海岸にあるVejers Strandの夏の別荘に集まり、消毒剤の入ってない渦流浴(whirpool)につかった後に、子供6人と大人9人がポンティアック熱に罹患する集団発生があった。L.pnumophila血清群1とL.micdadeiに対する抗体価が上昇した。臨床症状は子供で比較的軽かった。気管吸引物の培養とPCR が、病院における早期診断法として使われた。
(1) J. W. Den Boer, et al., Lancet, 351:114, 1998
(2) J. L. Kool, et al., Lancet 351:1030,1998
(3) A. E. Fiore, et al., Clin. Infect. Dis. 26: 426-433, 1998
(4) H. R. Luttichau, et al., Clin. Infect. Dis. 26:1374-1378, 1998

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