食品由来クリプトスポリジウム症集団発生−米国

1997年12月18日、米国ワシントン州スポーカンのあるレストランで宴会が行われたが、その後参加者の間に下痢、激しい腹痛を訴える人が多発した。参加者62人中54人が食後10日以内に発症し、潜伏期の平均は6日間であった。下痢(98%)、悪寒、発熱(61%)、頭痛(59%)、体の痛み(54%)、激しい腹痛(50%)、悪心(28%)、嘔吐(11%)などが自覚症状としてみられた。有症患者10人の検便を行ったところ、8人の便からクリプトスポリジウムが検出された。罹病期間の平均は5日間であった。宴会に供された食事のうち何が原因であったか聞き取り調査を行った結果、生で供されたグリーンオニオンが最も疑われた。洗浄されていないグリーンオニオンがレストランに配送されており、調理の過程でもきっちりと洗浄していたわけではなかったという。

1993年から米国内で食品由来のクリプトスポリジウム症の集団発生が本件以外に3件みられている。これらの事例に共通していることは、下痢が持続すること、潜伏期が平均6日であること、それに発症率が高いことである。臨床検査室では通常クリプトスポリジウムやサイクロスポーラなとの腸管寄生コクシジウム類の検査を行わないため、臨床家や公衆衛生関係者は持続性かつ重症の水様性下痢を訴える患者を診たならば、コクシジウム類感染を強く疑い、これらの検査を指示することが大切である。本件ではオニオンが感染源となった可能性が指摘されている。しかし他の複数の食材がレストランに配送される以前に汚染されていた可能性、調理関係者が汚染源となった可能性、あるいは調理過程で交差汚染が起こった可能性も否定できない。

(CDC、MMWR、47、No.27、565、1998)

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