眼科疾患患者におけるアデノウイルス検出状況−静岡県

1995年1月〜1997年12月までの3年間に、静岡市内のI眼科医院とK総合病院眼科を受診した0歳〜74歳の511名から採取した眼瞼結膜の擦過材料からアデノウイルス(Ad)分離および検出を試みたので報告する。

眼瞼結膜の擦過材料は1%牛胎児血清(FCS)加細胞維持液に採取し、培養細胞の準備ができるまで−20℃に保存した。

ウイルス分離は細胞培養法の定法に従い、Hep-2および一部Chang細胞を用い、細胞変性効果(CPE)を指標に最高5代まで継代し観察した。PCR法は HierholzerおよびAllardらの方法に準拠して行った。さらに、細胞培養法でAd19型と37型の判別が困難なものについて、加瀬ら(大阪府立公衛研)の報告に従い、Allardのプライマーを用いたPCR法で301bpのDNAバンドが検出された株のPCR産物に、制限酵素HaeIIIを用いて切断し、そのDNAパターンよりAd19型の判別を行った。

 1)最近3年間の眼疾患の患者発生状況は、流行性角結膜炎(EKC)が88%(448/511)と圧倒的に多く、次いで急性結膜炎が7.0%(36/511)、咽頭結膜熱(PCF)・アレルギー等が 5.3%(27/511)であった。月別発生状況では、EKCが毎月認められた(表1)。

EKC患者の3年間のアデノウイルス検出率(PCR法)は平均43%(192/448)、急性結膜炎等では37%(23/63)であった。

 2)眼疾患と血清型の間には関連が見られ、PCFにおけるAd3、7型、EKCにおけるAd8、19、37型は代表的な血清型であり、最近3年間の集計でもAd19型が33%(59/177)と最も多く、次いでAd8型19%(34/177)、4型16%(29/177)、3型14%(24/177)の順であった。年次別に見ると、1995年ではAd8型38%(30/79)、3型28%(22/79)、4型18%(14/79)、11型14%(11/79)と多種の血清型に分かれ、1995年以前の分離状況と同様の傾向を示した。

しかし1996年では、Ad19型54%(21/39)と4型28%(11/39)を合わせると全体の8割以上を占めていた。さらに1997年ではAd19型のみで78%(32/41)を占め、Ad19型による流行の兆しがうかがわれた(表2)。

 3)また、病原微生物検出情報による全国集計結果と比較すると、Ad血清型別の構成比に差が見られた。これは今回の調査がウイルス性眼疾患に限った結果であるためと思われるが、Ad19型が年々増加傾向にあり、今後Ad19型の流行に注意し、継続的な監視が必要と思われる。

静岡県環境衛生科学研究所
三輪好伸 杉枝正明 佐原啓二
長岡宏美 宮本秀樹 中村信也
石川眼科 石川靖彦

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