餅つき大会で発生した小型球形ウイルスによる食中毒−滋賀県

1997(平成9)年11月17日、滋賀県内のS小学校で全児童66名中20名の欠席者があり、欠席した児童はいずれも嘔吐、腹痛等の胃腸炎症状を呈している旨、管轄保健所に通報があった。疫学調査の結果、欠席者は17日20名、18日21名、19日6名、20日3名であり、ピークは17、18日の2日間と短期間であった。また、児童の家族にも胃腸炎症状を呈する者がおり、これらの児童、家族の多くは11月15日にS小学校主催の3世代交流餅つき大会に参加していたことが明らかとなった。さらに、参加者以外に、持ち帰った餅を食べた家族で胃腸炎症状を呈する者があったことから、この餅を原因とする食中毒事件であると判断した。

餅を食べた人数は、児童66名、教諭13名、児童家族 103名の合計 182名であった。このうち、胃腸炎症状を呈した人数は50名であった。それぞれの発症率をみると児童で59%と高い値を示した(表1)。発症者の主な胃腸炎症状の内訳は、下痢25名(50%)、嘔吐37名(74%)、嘔気43名(86%)、腹痛38名(76%)であり、嘔吐・嘔気を呈する者が多くみられたことがわかる。潜伏時間は摂食後15時間〜92時間に分布し、平均潜伏時間は43時間であった(図1)。潜伏時間が90時間以上の発症者が2名あったが、この2名はともに児童であり、うち1名については、同時に餅を摂食した家族のうち、母親が摂食後42時間、兄が摂食後15時間でそれぞれ胃腸炎症状を発症しており、二次感染の可能性も疑われる。

胃腸炎症状を呈した児童について、18〜19日に8名から採便を行い、電顕検索を行ったところ、3名の糞便から小型球形ウイルス(SRSV)が検出された。なお、A群ロタウイルス、アデノウイルスおよびエンテロウイルスはすべて陰性であった。糞便の細菌検査の結果、5名の糞便から黄色ブドウ球菌が検出された。また、当日提供された餅からも黄色ブドウ球菌が検出されたが、これらのコアグラーゼ型がすべて異なることから、今回の食中毒の直接の起因菌ではないと考えられる。しかし、食品からのこうした菌の検出は、食品の取り扱いが衛生的に行われていなかった可能性を示唆するものである。こうした、一般の人が参加して食品を取り扱う行事に対して衛生指導が特に重要である。

滋賀県立衛生環境センター
吉田智子 大内好美 横田陽子
滋賀県長浜保健所
児玉弘美 橋本信代 安田和彦
井掘政芳 東野貴子 丸田真治
大阪市立環境科学研究所
入谷展弘 勢戸祥介 春木孝祐

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