HIV-1薬剤耐性ウイルスの検索−システムの構築および現状の報告

AZTとddIなどの逆転写酵素阻害剤を中心とした現在までのHIV感染患者の治療は、プロテアーゼ阻害剤の開発により新たな局面を迎えた。近年この薬剤を含めた多剤併用療法により、HIV感染が死に至る病気ではなく慢性の感染症として経過する可能性が相次いで報告され、その延命効果が期待されている。その一方で、これらの薬剤の持続的な使用により薬剤に反応しなくなる耐性ウイルスの出現が逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤ともに数多く報告され、治療を進めるうえでの大きな問題として浮上している。

適切な治療を進めていくうえで耐性ウイルス存在の有無は重要な情報であり、国立感染症研究所エイズ研究センターでは医療機関および医薬品機構基礎研究推進室の協力を得て、現在治療を受けているHIV-1感染患者 221症例の薬剤耐性ウイルス検査を行った。221症例のうち血友病感染者が187症例、同性間性的接触が14症例、異性間性的接触が17症例であった。全体の約半数に当たる 105症例が逆転写酵素阻害剤のみ、約1/3に当たる72症例がプロテアーゼ阻害剤プラス逆転写酵素阻害剤の投与を受けていた。逆転写酵素阻害剤を長期にわたり投与されていた症例のほとんどが薬剤耐性を獲得しており、またプロテアーゼ阻害剤投与症例のうち血清中RNA コピー数が多い症例の中にはすでにプロテアーゼ阻害剤に対する多剤耐性を獲得しているものが見られた。

国立感染研エイズ研究センター 杉浦 亙他

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