A型肝炎家族内感染の発生−東京都

東京都において家族内感染発病例が見られたので報告する。

臨床的にA型肝炎と診断された家族内感染の発生は、初発症者(1997年1月)から最終発症者の終息(97年4月)までに約4カ月を要し、その間7名の感染者を出した。初発症者に海外渡航歴はなく、聞き取り調査による感染の原因として、1996年末に出席した忘年会での貝類等の喫食による感染が推定された。

初発症者は父親で、1月8日に倦怠感を訴えて入院、その後祖母、長女、長男が発症・入院し、母・三女の発症とともに二女が同時に入院となった。二女は、入院時は未発症であったがほどなく発症した。

検査には、PCR法、細胞培養法、抗原検出(ELISA)法、抗体検出(ELISA)法を用いて糞便ならびに血清について検査を行った(表1)。

HAVの検出(表2):父親と母親は、搬入された検体が血清のみであり、父親は発症から3カ月後の採血であったため抗HAV抗体の検出が陽性となっただけであった。母親は、血清からHAV遺伝子が検出され、急性期の途上にあったことがうかがえた。

長女、長男、二女、三女は共に糞便、血清からHAV遺伝子が検出され、細胞培養によりHAVも分離された。入院時非発症者であった二女は糞便からの抗原ELISA法による陽性および入院時の抗体検査結果が陰性であったことから、潜伏期にあったことが明らかとなった。HAV検出の経過から、二女は発症に伴い抗HAV抗体を獲得し回復へと向かったことが推察された。

また、急性期の経過時期に採取された検体からHAVが検出されたことから、ウイルスの排出は、潜伏期以降も持続して起こっていることが示された。期間としては、抗HAV抗体の上昇後、約1カ月程はHAVの排出が続いており、排出は、糞便および血清中の双方に見られることが認められた。このような場合には健常者との接触等、臨床上の注意が必要と思われる。

東京都立衛生研究所微生物部ウイルス研究科
新開敬行 吉田靖子 関根大正

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