SRSVのPCR とマイクロハイブリダイゼーション法について

1997(平成9)年11月11日〜21日の間に厚生省食品保健課主催による小型球形ウイルス(SRSV)の技術研修を国立公衆衛生院で行ったので概要を紹介する。

便検体は初めに電子顕微鏡で、次いでPCR を行うのが望ましい。

I.電顕によるウイルス粒子の検索

患者の便材料は電顕による検索を行い、SRSV粒子が確認された時には陽性とする。陰性あるいは診断に迷う時、電顕による検査ができない場合はPCRを行う。食品は含まれるウイルス量が少なく電顕で検出される事はほとんどないのでPCRを行う。

II.PCR 法

RNAの抽出:10〜20%糞便乳剤遠心上清および食品(超遠心ペレット)からのSRSVのRNA抽出にはUltraspecTM-3RNA(Bioteck Lab)等のキットを用いる。時間的に余裕のある時にはCTAB法が良い。検査材料にポリオウイルス2型(Sabin株)を加えて抽出する。別のチューブに陰性コントロールとして検査材料の代わりにDDWを入れたものについても行う。UltraspecTM-3RNA使用時の注意点はUltraspec Reagent をあらかじめ37℃で温めておくことと、良く混合するの2点である。RNAの溶出時にRNA Tack Resinが管壁に付着し、RNAの溶出が困難な時にはT101 を加え( 280μl程度)再度遠心し上清を得る。溶出液量が増えるので、エタノール沈殿を行い少量にする。この時にglycogenを2μg加えるとペレットが白い点として見えるので、RNAの回収が容易になる。

RT反応:患者の糞便および食品材料共にRTには35'、Oligo(dT)(12-18,GIBCO)およびポリオ(SB2-R1)のプライマーを混合して行う。35'プライマーは35プライマーの3'末端のTを切って 20merとしたもの、北日本のSRSVはプライマーの3'末端のTがAに変異しているものが多いとの秋田県衛生科学研究所の斎藤先生の報告による。Oligo(dT)(12-18)はSRSVが3'末端にpoly Aをもっているので、それに対応するプライマーである。35'のプライマーでcDNAが作製されない時でも、作られる確率が高い。SRSVのポリメラーゼ領域は3'末端から約3,000bp離れているので、必ずしも目的とする長いcDNAができるとは限らないので、35'プライマーも加える。

糞便材料からの1st.PCR:1st. PCRには35'・36、NV81・82・SM82、さらに可能であればYuri22 F・Yuri 22Rプライマー(本号5ページ秋田県衛科研・斎藤先生の項参照)、およびポリオのプライマー(SB2-F1・SB2-R1)も用いる(プライマーは混合しない、別別に行う)。研修時に分与した陽性コントロールはNV81・82・SM82のプライマーで行う。患者の糞便材料はNested PCRを行わない。

食品材料からの1st.PCR:1st. PCR は35'・36とポリオプライマーを用い別々のチューブで行う(陽性コントロールは行わない)。

Nested PCR:Nested PCRはNV81・82・SM82、可能であればYuri 22F・Yuri 22Rのプライマーを用いる。陽性コントロールはNV81・82・SM82のプライマーで行う。

判定:ポリオのPCRで目的とするバンド(200bp)が確認されること(RNAの抽出が良好)、陰性コントロールで目的とするバンドが見られないこと(遺伝子の混入が無い)、および陽性コントロールで目的とするバンド(330bp)が見られる(PCRが良好)時にのみ判定をする。この条件を満たさない時には再度検査する。

PCR で目的とするバンドが認められた時には確認試験のマイクロプレートハイブリダイゼーションを行う。

III.マイクロプレートハイブリダイゼーション

分与したプローブは35'・36、NV81・82・SM82およびYuri 22F・Yuri 22Rのプライマーを用いて増幅したDNAに用いることができる。

ハイブリダイゼーションの注意点としては、目的とするバンドの大きさを再度確認し、ゲルからDNAの抽出に際してはNaI溶液でゲルを完全に溶解させること。NaI溶液は旭硝子KK「DNA分離精製用試薬」に添付されているものを用いると良い。

DNAの回収にはQIAquick PCR Purification Kit(QIAGEN)を用いると簡便である。

ハイブリダイゼーションで陽性の時にSRSV(+)とする。

PCR陽性でプローブに反応しないものが数件検出された時には私宛に、PCR 産物および糞便材料を送付していただければ幸いに存じます。

国立公衆衛生院衛生微生物学部 西尾 治

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