特定STD クリニックにおける男性同性愛者の淋病、1993〜1996年−米国

男性同性愛者(以下MSM)の淋病の動向は、HIV感染リスクに影響するような性行動の変化を反映しうる。1987年に淋菌の薬剤耐性をモニターする目的で発足したGonococcal Isolate Surveillance Project(以下GISP)はMSMの淋菌感染に関わるファクター同定のための特別のサーベイを実施し、MSM中の淋病患者数、比率とも増加しているとの結果を得た。26州で選んだクリニックで淋菌の単離、性的指向を含めた患者情報収集等をおこなった。GISP全サンプル中のMSM由来比率は1993年が5%、1996年が8.7%であった。MSMから単離される淋菌株数が全単離数の5%を超えるクリニックにおける平均のMSM由来単離数比率は1993年が12%、1996年が23%であった。

米国でのMSMの淋病発生は1980年代初頭から、HIV流行に伴い危険な性行為が警戒されたことで、減少していたが、いくつかの報告ではMSMの性行為様式が元へ戻りつつあることがわかっている。今回このレポートからは米国全体の淋病が減少しているのとは裏腹にMSMでは増加していることが判明した。MSM間の邂逅がリスクを伴うものとなり、MSMでの淋病増加の原因となるだけでなく、このpopulationでのHIV伝播を促進する可能性がある。今回のクリニックの調査では淋菌感染MSMの約1/4がHIV感染者でもあった。HIV感染者の尿道炎は精液中のHIV増加、それによるHIV伝播の可能性の増大につながる。また、HIV非感染者の尿道炎はHIV感染の危険性を増大させる。MSMでの淋病の増加は、行動学的、生物学的見地から、HIVの拡散と関係する公衆衛生の問題ととらえることが重要である。これをふまえて、MSMのより安全な性行為を定着、維持するためのアプローチとともに、ルーティーンの淋菌スクリーニング、感染者への適切な処置、適切なパートナーマネージメント等の淋病のコントロールが必要である。

(CDC、MMWR、46、No.38、889、1997)

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