家族内流行した急性出血性結膜炎(AHC)からのコクサッキーウイルスA24型変異株の分離−岡山県

コクサッキーウイルスA24型変異株(CA24v)は、エンテロウイルス70型とともに急性出血性結膜炎(AHC)の病原ウイルスとして知られている。病原微生物検出情報によれば CA24vによるAHCの流行は、1993年9月〜10月に宮崎県(本月報Vol.15、No.1)および鹿児島県(同Vol.15、No.5)での流行以後報告がなく、分離報告も1994年9月の東京都以後途絶えていた。今回、同一家族3名がAHCと診断された事例に遭遇し、うち2名の結膜ぬぐい液からCA24vが分離されたのでその概要を報告する。

1997年7月下旬に岡山市東北部M地区に住む1家族3人(父55歳、母53歳、高校生男子18歳)が相次いで目の異常を訴えて眼科医院を受診した。患者3名に関するデータはのとおりである。初発患者は高校生男子で、7月28日に発症し、他の眼科医院で花粉症と診断され治療を受けたが軽快せず、2日後の7月30日父母ともに発症し、同日本医院を受診した。初診時の症状は、高校生男子は結膜充血と結膜炎、母親は片眼の結膜充血と結膜炎のみであったが、父親は両眼に結膜充血と結膜炎に加えて点状ないし斑状の結膜下出血がみられ、発症の状況から3名ともAHCと診断された。

この3名から初診時に採取した結膜ぬぐい液で培養細胞3種類(FL、RD-18S、Vero)によるウイルス分離を行った結果、高校生男子の検体ではすべての細胞で細胞変性効果(CPE)はみられなかったが、父と母のものではFLとRD-18Sでエンテロウイルス様のCPEが観察され、いずれの分離株も抗CA24v中和抗血清(抗EH24血清、国立感染症研究所より分与)、抗CA24抗血清(ISMUNIT社)20単位で容易に中和された。培養温度33℃と37℃で接種後CPE出現日数を比較すると、37℃の方が1〜2日早くCPEが出現した。

初発患者の高校生からウイルスが分離されておらず断定はできないが、発生状況から見て、高校生から父母に感染が広がったと考えられる。しかし、旅行等はしていないとのことで感染経路は不明であった。

岡山県感染症サーベイランス事業の1997年7月中旬(第29週)〜8月中旬(第33週)の患者情報では、県内のAHC患者数は7名、M地区を含む県東南部(岡山・東備地域)では今回報告の3名のみで、それ以降も特に増加は認められていない。したがって、この流行は家族内の限局的流行であったと考えられる。1993年の宮崎県におけるAHC流行では家族内感染例とともに学校内での流行がみられているが、今回の発生が夏期休暇中であったことから家族内流行にとどまったのではないかと思われる。一方、今回の例で典型的な結膜下出血症状を呈したのは1名のみであり、AHCと認識されない症例がある可能性もある。なお、今回の例で、第1病日の2名では CA24vが分離されたが、第3病日の高校生からはウイルスが分離されなかったことから、ウイルス分離のためには発病後ごく早期の検体採取が必要と思われた。

岡山県環境保健センター
濱野雅子 葛谷光隆 藤井理津志
小倉 肇 森 忠繁
大本眼科医院 大本佐和子

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