ビルハルツ住血吸虫と旋毛虫が重複感染した1例

近年、国際交流の発展に伴い輸入熱帯病の増加が問題となっている。

著者らは世界一周旅行中にビルハルツ住血吸虫と旋毛虫が重複感染したと思われる症例を経験したので報告する。

ビルハルツ住血吸虫はアフリカ、中近東の熱帯地方にのみ分布する寄生虫で、その感染例は近頃わが国でも稀ではなくなった。

症例は33歳男性、1993年2月〜1996年7月まで海外渡航、1993年2月より南米、94年4月エジプト、イスラエル、同9月南アフリカ共和国、10月マラウイ、12月タンザニア、ケニアそして1995年11月ポーランドを旅行している。

旅行中1994年12月にマラリアに罹患、アフリカの大学病院にてハロファントリンの内服にて軽快、1995年4月排尿痛、外陰部痛があり、激痛は1週間くらいで軽快するも排尿痛はその後も持続した。同時に両下腹部痛が認められた。

1995年11月ポーランドにてソーセージを食べて下痢を発症したが自然経過で軽快する。1996年帰国、近医にて好酸球増多を指摘され、同年4月22日、検査目的で本学大学病院に入院、寄生虫の感染も疑い寄生虫学教室に検査依頼あり、検便にてビルハルツ住血吸虫卵を認めたので、尿沈査の検査を行ったところ多数のビルハルツ住血吸虫卵(60,000/day)を検出した。さらに排尿痛、筋肉痛(背部肩甲部、臀部)を認めたので旋毛虫抗原による血清診断を行ったところ強陽性の結果を得た。ビルハルツ住血吸虫はプラジカンテルにて治療し、虫卵の陰性を認めた。また、旋毛虫はメベンダゾールにて治療し、現在経過観察中である。

藤田保健衛生大学医学部寄生虫学教室
長瀬啓三 前野芳正 楠原康弘

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