<速報>小型球形ウイルスによる集団発生事例−島根県

1997年4月と6月に島根県下で2つの集団胃腸炎が発生した。

事例1:福祉施設において3月29日を初発とし、4月1〜2日をピークに成人138人中授産従事者を中心に41名が下痢、腹痛、嘔気、嘔吐等の胃腸炎を発症した。患者発生は3月29日2名(調理員1名)、30日1名、31日2名、4月1日夕刻〜2日午前中にかけて34名、そして3日2名であった。

ウイルス検査の結果、患者30名中20名および接触者11名中1名からRT-PCR(35/36、NV81/82・SM82プライマー系)法でSRSV遺伝子が検出され、そのうち6名から電子顕微鏡でSRSV粒子を検出した。また、PCR陽性者の追跡調査で11〜12病日まで遺伝子が検出可能であった。

事例2:6月3、4日には仕出し弁当を食した53名中25名が嘔吐、発熱、下痢の症状を示した。潜伏時間は24時間〜36時間が推定された。上記プライマーによるRT-PCRではSRSV遺伝子は検出されなかったが、電子顕微鏡で10名中4名から上記と同様な形態のSRSVが検出された。しかし、調理従事者は健康であり、ウイルス粒子は検出されなかった。

患者発生のピークが24時間前後に集中していたので、いずれも共通の飲食物を介した単一曝露感染が考えられた。ウイルス遺伝子の多様性が想定されるSRSVのRT-PCRには複数種類のプライマーの使用と電子顕微鏡を組み合わせた検索が必要である。

島根県衛生公害研究所
飯塚節子 佐藤浩二 板垣朝夫

今月の表紙へ戻る


Return to the IASR HomePage
Return to the IASR HomePage(English)

idsc-query@nih.go.jp

ホームへ戻る