4種血清型のShigella flexneri(B群赤痢菌)が同時に検出された海外旅行者下痢症例−東京都

海外旅行者下痢症例においては、複数の病原菌が同時に検出される混合感染事例の割合が高いことは良く知られているが、今回、4種類の血清型のShigella flexneri(B群赤痢菌)が同時に検出された非常に稀と考えられる症例を経験したので報告する。

患者は東京都板橋区在住の34歳の男性で、1997年1月24日に出国、タイとネパールを旅行後4月16日に帰国した。検体添付の調査書によると、旅行中の4月8日から下痢症状が発現、帰国日の16日には軟便状態であった。症状は、水様性の下痢(最高1日4回)のみで、腹痛、発熱等は記録されていない。患者糞便は帰国日に採取され、ただちに検査に付された。採取前の受診、抗菌剤等の薬剤服用はなかった。常法により各種腸管系病原菌検索を実施した結果、4種血清型のS.flexneri(1a、1b、2a、3a)とカンピロバクターが検出された。

赤痢菌の検査には、SS寒天培地およびDHL寒天培地を用いているが、前者においては血清型1a、1b、2a、3a菌がそれぞれ1、2、3、2集落、後者では2a菌のみ4集落認められた。分離各血清型菌株についてKBディスク法で実施した9種薬剤に対する耐性試験の成績をに示した。1aは感受性、1bはTC・SM・ST耐性、2aはCP・TC・SM・ABPC耐性、3aはCP・TC・SM・ST耐性とそれぞれ異なる耐性パターンであった。

東京都立衛生研究所微生物部
野口やよい 松下 秀 柳川義勢 五十嵐英夫

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