4月後半小学校でのB型インフルエンザの集団発生−広島県

広島県における1996/97シーズンのインフルエンザウイルス分離状況は、A香港(H3)型ウイルスについては、1996年12月12日に小学校の集団発生患者から分離されたのが最初で、その後徐々に分離数は増加、1997年1月第3週(1月19〜25日)がピークであった。しかし、その後は分離ウイルス数は急激に減少し、2月17日の散発患者からの分離を最後に全く分離されなくなった(この間87株のAH3型ウイルスが分離された)。

一方、B型ウイルスについては、AH3型ウイルスの分離よりも早い、12月6日に散発患者から1株分離されたものの、その後の12月〜3月中旬まで1株も分離されなかった。ところが3月18日の散発患者から再びB型ウイルスが分離されるようになり、5月16日現在散発患者から13株、集団発生患者から14株が分離されている。それらの集団発生例は4月21日に県南部のN小学校で、また同月25日に県東部のM小学校で発生したもので、N小学校の事例では、全校199名中69名の患者の発生が報告されている。患者の症状はいずれも38.5C〜40.5Cの高熱と咳が主で、嘔吐や腹痛を伴う患者も認められた。またM小学校の事例では、全校531名中92名の患者が報告され、症状は、やはり40C前後の高熱と咳および咽頭痛が主であった。

分離されたB型ウイルスについて国立感染症研究所から配布された1996/97シーズンの標準感染免疫血清B/三重/1/93(ホモHI価:128)を用いてHI試験を実施したところ、散発事例から分離された株では1:64〜1:256と高いHI価を示した一方で、両集団発生例から分離された株では、いずれも<=1:16〜1:32と低いHI価を示し、本県においては、同時期に抗原性を異にする2種類のB型ウイルスが流行していることが推察された。本県では現在も少数例ではあるがインフルエンザ様疾患の患者発生が続いていることから、今後のウイルスの動向を注意する必要がある。

広島県保健環境センター
高尾信一 豊田安基江 福田伸治 野田雅博 徳本静代

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