1996年わが国におけるカンピロバクターの血清型別状況−カンピロバクター・レファレンスセンター

全国カンピロバクター・レファレンスセンターでは、国際型別システムの一つであるLior法を採用し、30型の抗血清(7支部センターで分担作製)を用い、カンピロバクター腸炎から分離された菌株の血清型別をサービス事業として行っている。

1988〜1995年までの型別成績については本月報Vol.16、No.7に型別結果の概略を紹介した。

その後も、全国6地区の衛生研究所に設置された7支部センター(秋田県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、山口県、熊本県)では集団、散発下痢症由来株の血清型別に係わるレファレンス・サービス事業を続行している。

ここでは、1996年5月までの1年間に各支部センターにおいて型別に供された集団食中毒13事例由来 193株および散発下痢症由来 571株、計 764株についての血清型別結果を紹介する。

分離株の主要血清型は別表に示した通りである。前回、本月報で紹介した血清型とさほど大きな変動はないが、毎年上位に位置していたTCK 1型が、この1年間をみる限り、激減傾向にある。また、LIO 28、LIO 50の血清型も減少している。これらに取って替わって、LIO6、LIO 27およびTCK 13型が主要血清型に変動してきた。LIO 36型は中部以西の各地で高頻度に検出されたが、関東、東北地域では全く検出されず、地域的な偏りが推察された。

集団例においては、同一時期に、県の異なる二つの学校の生徒が、大分県に修学旅行に行った際、同一施設を利用し、集団食中毒に罹患した。この時に原因食品と推察された食品(鶏肉)由来株と患者由来株の血清型(LIO 36)が同一であることが確認された。血清型別成績により原因食品が解明された貴重な事例であった。また、わが国では稀にしか検出されない血清型LIO 22の集団事例(海外旅行)も認められた。

カンピロバクター腸炎の感染経路や感染源の追求あるいは疫学解析に本血清型は有効な手段であり、今後も継続した調査が必要である。また、最近、C.jejuniのニューキノロン剤耐性株も出現しており、耐性菌の動向も監視していかなければならない。

カンピロバクター・レファレンスセンター
東京都立衛生研究所 斉藤香彦 只野敬子 伊藤 武

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