国立感染症研究所 感染症情報センター
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インフルエンザ


一般向け解説


■ VRSAとは?

 VRSAとは、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による感染症の治療に用いるバンコマイシンという抗生物質に対する耐性を獲得した黄色ブドウ球菌(vancomycin-resistant Staphylococcus aureus :VRSA)の略です。

 欧米諸国では、VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が蔓延しています。VREやバンコマイシン に生来耐性を獲得している細菌から、それらが持っているバンコマイシン耐性遺伝子(vanA vanB など)が、通常の黄色ブドウ球菌やMRSAに取り込まれることなどによりVRSAが出現する危険性が、専門家により以前から警戒され、特別な注意が喚起されていました。


■ 今回はどうして重大なの?

 今回、米国で40歳の透析を受けている患者から、vanA 遺伝子を持っているVRSAが検出されました。この耐性株は、バンコマイシンの濃度が培地1mlあたり128μgという高濃度でも死なない高度耐性株であると報告されています。

 MRSAによる感染症に対してはバンコマイシンなど限られた抗生物質しか効果が期待できないためVRSAの出現は非常に警戒されて来ましたが、特に、今回報告されたような高度耐性株はこれまで世界のどこからも報告されていませんでした。


■ VRSAはどうして問題なの?

 MRSA感染症に有効な治療薬は限られているため、我が国でもVRSAが出現し増加した場合、バンコマイシンによる感染症の治療が非常に困難となり、患者さんの予後を悪化させ、しかも治療期間の延長などにより、社会的、経済的損失をもたらすと考えられています。


■ VRSAの出現や増加を防止するためにはどうしたらいいのでしょうか?

 以下の3つの基本的事項を守る事が重要です。

(1)実効ある院内感染対策の実施
 VRSAの発生の母地となるVREの保菌者や感染患者さんが入院しておられる医療施設内では、入院患者さんの間でVREが伝播し、VREの保菌率や感染率の上昇を防止するための院内感染対策(標準予防策、接触感染予防策)を徹底する。

(2)バンコマイシンの適正使用
 VRSAの発生の母地となるVREの増加や蔓延を防ぐため、原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめる。

(3)VREおよびVRSAの監視体制の強化
 各々の医療施設内においてVRSAの発生の母地となるVREの蔓延を防止するため、日常的にVREの分離状況や発生動向を正確に把握する。


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