国立感染症研究所 感染症情報センター
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VREとは?

1)
VREとは、バンコマイシン(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の治療に用いられる抗生物質)に対し耐性を獲得した腸球菌です。(Vancomycin Resistant Enterococci=VRE)

2)腸球菌はヒトや動物の腸や外生殖器(会陰部や膣)に常在する菌で、全ての人が多かれ少なかれ持っていますが、全ての腸球菌がバンコマイシンに耐性というわけではありません。

3)普通の健康な人の腸内などにVREがいても病原性が非常に弱いので病気(感染症)をおこすことはありません。
そのため、たとえVREが検出されても、健康な人の場合は通常の日常生活において特別に注意をはらう必要はありません。

4)ただ、問題となるのはVREによる「感染症」が、入院患者の中でも、特に、癌、胸腹部外科手術後の患者や、白血病、火傷、移植、栄養失調などの重篤な基礎疾患を有する患者におこった場合です。このような患者では、しばしば敗血症や腹膜炎など重症の感染症をおこし、死亡することもあります。

5)VREは1986年にヨーロッパで最初に分離されて以来、欧米では病院の集中治療室などで拡がり、重要な「院内感染菌」の一つとなっています。

6)バンコマイシンはMRSAに対する特効薬ですが、VREに対しては、バンコマイシンのみならず、現在、臨床で細菌感染症の治療に用いられているほぼ全ての種類の抗菌薬が無効の場合が多く、その治療に重大な支障をきたす事態が欧米でおこっています。

7)VREが欧米で拡がった原因として、欧米ではバンコマイシンの使用の歴史が長く、また、MRSA以外に肺炎球菌などの感染症にも広く用いられて来たことが指摘されています。一方では、欧州ではバンコマイシンに化学構造が類似したアボパルシンという薬を鶏やブタなどの肥育促進のため飼料に添加したことにより、鶏など家畜の腸管でVREが選択的に増加し、それが人に広がって来たとも考えられています。

8)わが国において、これまでに輸入鶏肉からのVREの検出が報告され、一般の方々の関心も高まっておりますが、vanAまたはvanB型のVREが検出された入院患者等の報告数は、1999年3月末現在14例(実人数)となっています。しかし、将来的には、VREが院内外の環境の広範な汚染や院内感染などを引き起こす危険性は高く、VREの早期検出と拡散防止対策などに一層注意を払うことが求められています。


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