国立感染症研究所 感染症情報センター
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パンデミック(H1N1)2009
Q&Aは順次更新作業を進めております

その他良くある質問
1 注意報・警報レベル、あるいはインフルエンザ流行レベルマップについて教えてください。
2 インフルエンザ患者推計はどのようにして計算されているのですか?
3 インフルエンザの同じ亜型、たとえばA香港型(H3N2)やAソ連型(H1N1)に同一シーズンに2回感染した事例はあるのでしょうか?
4 パンデミックインフルエンザや季節性インフルエンザで発疹がでることはありますか?
1 注意報・警報レベル、あるいはインフルエンザ流行レベルマップについて教えてください。

 ・警報・注意報発生システムとは
厚生労働省・感染症発生動向調査事業により、 全国約5,000のインフルエンザ定点医療機関を受診したインフルエンザ患者数を週ごとに把握し、保健所ごとに基準値を超えると注意報や警報が発生する仕組みになっています。あくまで、このシステムでの警報・注意報はそのレベルにあることを示唆しているものです。

・警報・注意報の仕組み ? 保健所 ?
警報は、1週間の定点当たり報告数が以下の警報の開始基準値以上の場合に発生します。前の週に警報が発生していた場合、1週間の定点当たり報告数が別の基準値(警報の継続基準値)以上の場合に発生します。注意報は、警報が発生していないときに、1週間の定点あたり報告数が以下の注意報の基準値以上の場合に発生します。


流行発生警報

流行発生
注意報

開始基準

継続基準値

基準値

30

10

10

例えば以下のように保健所ごとに警報・注意報が発生します。



例:「ア保健所」における警報と注意報の発生状況



インフルエンザ流行レベルマップ

(URL:https://nesid3g.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/index.html)

  前述のとおり警報・注意報の仕組みで説明した基準を使って流行レベルマップが作られています。都道府県ごとに警報レベルを超えている保健所があれば赤色系3段階で、注意報レベルを超えている保健所があれば黄色系3段階で示します。具体的な状況ごとの色分けとその意味は以下の通りです。

警報・注意報レベルを超えている保健所数の割合
警 報 大きな流行の発生・継続が疑われる。 70 ---> 100%
30 ---> 70%
0---> 30%
注意報 流行の発生前:今後4週間以内に大きな流行が発生する可能性がある。

流行発生後:その流行がまだ終わっていない可能性がある。
70 ---> 100%
30 ---> 70%
30 ---> 70%


例えば
 A県に下の図のように「ア」、「イ」、「ウ」、「エ」、「オ」の5つの保健所があるとします。



A県における保健所の管轄

・下図のように3か所で注意報が出ていた場合には、A県の保健所のうち60%で注意報が出ているので流行レベルマップではA県は下のように黄色で塗られます。




・下図のように2か所で警報、3か所で注意報が出ている場合、A県の保健所のうち40%で警報、60%で注意報が出ています。この場合は警報を優先して流行レベルマップではA県は下のように桃色で塗られます。



●最後に
国立感染症研究所感染症情報センターでは、インフルエンザ流行に関連する情報として、「警報・注意報発生システム」で得られた情報を提供しています。以下のアドレスをご参照ください。

インフルエンザ流行レベルマップ
URL: https://nesid3g.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/index.html

警報注意報発生システムとは
URL: https://nesid3g.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/guide.html


2 インフルエンザ患者推計はどのようにして計算されているのですか?

 インフルエンザ患者推計は毎週全国の保健所ごとに指定された医療機関(定点医療機関)から報告された患者数に基づいて算出されます。算出方法は全国のインフルエンザ定点医療機関から報告される患者数、定点医療機関数(約5000)と全国の医療機関数(約68000)によって算出されます。算出は地域(都道府県)特性と医療機関の特性を考慮して行われます。インフルエンザの医療機関特性は4つです(表)。

表 医療機関の特性

A)       病院の小児科

B)       小児科を有する一般診療所(主たる診療科目が小児科)

C)       小児科を有する一般診療所(主たる診療科目が小児科以外)

D)      病院の内科または内科を有する一般診療所(小児科を有しない)

算出方法は次の1)、2)に従います。

1)              都道府県別算出

?@       医療機関特性別平均患者数を算出

?A       医療機関特性別に?@×医療機関数を算出(医療機関特性別推計値)

?B       医療機関特性別?Aの和を算出(医療機関特性別推計値の合計)

2)              患者推計値の算出

都道府県別に算出された作業の「1)?B」の47都道府県分の合計値(都道府県分の和)を算出

以上より、2)の値がインフルエンザ患者推計値となります。

なお、患者推定値にはばらつきの大きさを95%信頼区間で示しています(インフルエンザ流行レベルマップhttps://hasseidoko.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/new_jmap.html)。

(例)

この1週間に全国で約60,000例(95%信頼区間40,000-80,000)の患者が発生していると推定される。

参考文献

永井正規.感染症発生動向調査に基づく流行の警報・注意報および全国年間罹患数の推計−その9−.厚生労働科学研究補助金新興再興感染症事業「効果的な感染症サーベイランスの評価並びに改良に関する研究」(主任研究者:谷口清州) 平成20年度研究報告書. 2009年3月.

3 インフルエンザの同じ亜型、たとえばA香港型(H3N2)やAソ連型(H1N1)に同一シーズンに2回感染した事例はあるのでしょうか?

 文献的にも報告はあり、そんなに稀なものではないと言われています。A/H2N2(アジア型)では6ヶ月間に27%に見られた、あるいはA/H3N2では1970年に17%の率で見られたなどの報告があります。またA/H1N1でも、1980年に9.3%、20%という再感染の報告があります。これらはシーズン中に抗原変異が起こったことに関連していることが記載されています。実際、一つのインフルエンザシーズンでも、流行期の初期と後半ではかなり抗原性の違うものが流行することがあります。これらの報告はウイルス学的に証明されているものですが、臨床の場面での可能性としては、診断の擬陽性が考えられます。インフルエンザは症状だけでは他の疾患と鑑別診断は容易ではありませんし、迅速診断キットで陽性であっても、分離やPCRでは陰性の例もありますので、2回感染したと言っても、どちらかの診断が違ったということもありえます。もちろん、型や亜型が異なれば再感染は容易に起こります。すなわちA香港型(H3N2)に罹ったあとで、Aソ連型(H1N1)とかB型には罹り得ます。今回のパンデミックでは、チリから、2〜3週間隔でウイルス学的に確認された症候性の再感染3症例が報告されています(EID 16(1):156-157, 2010)。この原因については、十分な免疫ができる前に再曝露をうけたせいではないかと記載されています。

文献

1. Sonoguchi T, Sakoh M, Kunita N, et al: Reinfection with influenza A (H2N2, H3N2, and H1N1) viruses in soldiers and students in Japan. J Infect Dis. 1986 Jan; 153(1): 33-40
2. [No authors listed] Reinfection with influenza. Lancet. 1986 Aug 16; 2(8503): 372-4.
3. EID. 16(1):156-157, 2010.


4 新型インフルエンザや季節性インフルエンザで発疹がでることはありますか?

季節性インフルエンザ感染に伴って、まれながら皮疹を生じることがあると報告されています。麻疹を思わせる斑状丘疹状の発疹(maculopapular rash)が多いようですが、点状出血(petechiae)をきたしたとの報告もあります。

パンデミックインフルエンザA/H1N1感染でも斑状丘疹状の発疹が生じたとの症例報告があります。

ただし、インフルエンザで皮疹が生じる頻度はかなり低いものと考えられ、まずはインフルエンザ以外の感染症や薬疹といった他の原因について検索する必要があります。

文献
1. Clinical Infectious Diseases 1999;29:453-454
2. CMAJ. 2009 Dec 7. [Epub ahead of print]

 


 



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