国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ
パンデミック(H1N1)2009 - 更新 78
2009年12月11日 WHO (原文)

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update 78

2009年12月6日現在、世界で208以上の国、自治領、地域から、9596症例以上の死亡例を含む、実験室診断により確定されたパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009の症例が報告されている。

世界各国が、特に軽症例について全例報告を中止しているため、実際に発生している症例数よりも、報告数ははるかに低くなっていると思われる。WHOはWHOの地域事務局や加盟国と連絡を密に取り、複数のデータをモニタリングして、パンデミックインフルエンザの流行状況を監視している。

Situation update:

北半球の温帯地域においては、パンデミックインフルエンザの流行は北米とヨーロッパの一部(西部の一部と北部、東部)ではすでに極期を過ぎたようだが、中央、南東部ヨーロッパ、南、および東アジアでは引き続き流行している。インフルエンザの感染伝播は南部、および中央アジアで継続しており、アフリカのほとんどの地域でパンデミックウイルスが循環しているエビデンスがある。

アメリカとカナダでは、インフルエンザウイルス感染伝播は引き続き起こっているが、インフルエンザ様症状(ILI)の流行は減少しており、感染伝播、ILIともにそれぞれ5週、3週連続減少傾向である。アメリカでは、8週間連続して増加傾向であった肺炎とインフルエンザによる死亡者(P&I致死率)が減少傾向にあるが、依然エピデミックを示す値を超えている。同様に実験室診断で確定された1週間の入院例数、死亡例数も減少傾向に転じた。現在のところ、冬季と夏季におけるインフルエンザの流行状況を比較すると、アメリカでは冬季のほうが夏季に比べ2~3倍、カナダでは4~5倍の入院例や死亡例を認めている。しかしながら、全体の入院率、死亡率は、南半球の温帯地域の国々の冬季のそれと同程度である。これは、ウイルスの感染伝播が、冬のほうが予想されていたよりもより広く、かつ強力に広がっていたこと、また南半球と比較し病気の重症化率は変化がなかったことを示している。季節性インフルエンザと同様に、基礎疾患のある人の方がパンデミック(H1N1)2009 インフルエンザウイルス感染により入院、あるいは死亡するリスクは高い。カナダの冬季において、入院例の52%、ICUでの治療が必要であった症例の60%、そして死亡例の67%が基礎疾患を持っていた。ほかの多くの国々と同様に、カナダでの死亡例の基礎疾患は、喘息、慢性循環器疾患、免疫陽性状態、糖尿病の順で多かった。

ヨーロッパでは、大陸全般にわたってパンデミックインフルエンザウイルスの感染伝播が起こっている。ILI患者がいまだ増加しているフランスを除き、ベルギー、アイスランド、アイルランド、オランダ、スペイン、ポルトガル、イタリア、ドイツを含む西ヨーロッパの国々では、ILI患者数は極期を越えたと考えられる。

ノルウェー、スウェーデン、デンマークといった北ヨーロッパでは、呼吸器疾患患者の発生※は依然多いが、インフルエンザの流行は収まってきている。アルバニア、チェコ、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、ラトビア、ポーランド、ルーマニア、モンテネグロ、スロベニア、トルコといった中央、南東ヨーロッパ地方では、インフルエンザの流行は依然続いている。さらに東部のグルジア、ブルガリア、ウクライナといった地域では、ILIや急性呼吸器疾患(ARI)発生率が減少している。ロシアでは、引き続きパンデミックインフルエンザウイルスの流行が続いているが、全体としての流行は、最近、極期を越えた。リトアニア、ギリシャでは呼吸器疾患が高率に報告され、フランスや東部および北部ヨーロッパからは医療機関への負担がでているとの報告がある。ヨーロッパで検出されたインフルエンザAウイルスの99%はパンデミックH1N1 2009 インフルエンザウイルスである。参考までに、過去4週間のRSVの検出率がヨーロッパでは高くなっており、若い子供たちの間でのILIの流行が上昇している一因になっているかもしれない。

中央および西部アジアでは、パンデミックインフルエンザの感染伝播は依然続いている。引き続きカザフスタン、キルギスタンでILIやARIが増加しているが、アフガニスタン、イスラエル、オマーンでは極期を越えたようである。パンデミックウイルスはイラン、イラク、ヨルダン、そしてその周辺国で引き続き流行している。

東アジアでは、パンデミックインフルエンザの感染流行は続いている。日本ではインフルエンザの流行は継続して増加傾向であり、最近流行極期を迎えた香港や台湾でも同様に増加傾向である。中国南部では一定したILIの報告が続いているが、中国北部、モンゴルでは減少傾向である。南アジアでは、インフルエンザの流行はインド北西部、スリランカで活発となっている。アジアでは季節性インフルエンザウイルスが少数ながら検出され続けているが、その数は減少している。

中央および南部アメリカやカリブ海諸国の熱帯地域では、インフルエンザの流行は地理的に広範囲で起こっているが、患者数はほとんどの地域で減少している。

限られたデータによると、アフリカでは、冬季を過ぎた南アフリカ共和国を除き、大陸全土でパンデミックインフルエンザ(H1N1)2009が検出されている。北部および東部アフリカでは検出されたインフルエンザウイルスの中でパンデミック(H1N1)2009ウイルスが優勢となっている。

南半球の温帯地域では、パンデミックインフルエンザの散発例の報告はあるが、持続的な流行は報告されていない。

※intensity-病勢(WHOでは呼吸器疾患患者の発生状況のレベルで決定している)



地域名 累積総数
2009年12月6日まで
死亡例
WHOアフリカ地域 (AFRO) 109
WHOアメリカ地域 (AMRO) 少なくとも6,131
WHO東地中海地域 (EMRO) 452
WHOヨーロッパ地域 (EURO) 少なくとも1242
WHO東南アジア地域 (SEARO) 814
WHO西太平洋地域 (WPRO) 848
総計 少なくとも 9,596
 

※各地域における更新情報については下記のページをご覧ください
WHOアフリカ地域(AFRO:Regional Office for Africa)
WHOアメリカ地域(AMRO:Regional Office for the Americas)
WHO東地中海地域(EMRO:Regional Office for the Eastern Mediterranean)
WHOヨーロッパ地域(EURO:Regional Office for Europe)
WHO東南アジア地域(SEARO:Regional Office for South-East Asia)
WHO西太平洋地域(WPRO:Regional Office for the Western Pacific)
(2009/12/25 IDSC 更新)
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