国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ
ウクライナのパンデミック(H1N1)2009
2009年11月1日 WHO (原文)

更新履歴

2009年10月28日、ウクライナ保健省は、ウクライナの事務局を介してWHOに、ウクライナ西部地域での異常に高い急性呼吸器疾患の活動状況と、これに関連した入院数と死者の増加を報告した。

2009年10月30日、ウクライナの保健省は、多くの地域のうち2ヶ所の地域で急性呼吸器疾患を呈した患者から得られた30検体のうち11検体にRT-PCRを用いてパンデミック(H1N1)2009ウイルスを確認したと発表した。キエフにあるナショナルインフルエンザセンターを含む2ヶ所の実験室で検査を実施した。確認検査はインフルエンザのWHO協力センターの一つで実施する予定である。

テルノポリ、リヴィウ、イヴァーノフランキーウシク、チェルニウツィーの各地域で、急性呼吸器疾患(acute respiratory illness; ARI)/インフルエンザ様疾患の流行が急激に増加している。これら地域における高いレベルの感染伝播は、重症急性呼吸器疾患を伴った入院数と死者の増加と一致する。

2009年10月30日までに1,100例の小児を含む2,300例以上が入院している。32例の小児を含む131例がICU管理を必要とした。2009年10月31日までに重症のARIに伴った38例の死亡が登録されている。暫定的な疫学データの解析で重症例と死亡例は、主にこれまで健康であった20−50歳代の青年層に認められている。致死例および重症例は、臨床症状が認められてから5−7日目に医療機関を受診していると報告されている。

とりわけ南半球から提供された、今日までのH1N1 2009パンデミックの国際的な経験では、重症例の発生は、受診の遅れや医療や介護へのアクセスが困難な状況が影響していることが示されている。加えて、このウイルスは、急速に進行する重篤な肺病変を引き起こす可能性が示唆されており、この際には治療が極めて難しいことも示されている。

ウクライナの保健省により、ウクライナ全土に公衆衛生対策の勧告が出され、集会、会合等の自粛や学校閉鎖、サーベイランス活動の強化、呼吸器衛生の強化、季節性インフルエンザリスクグループへの季節性インフルエンザワクチンキャンペーンの継続が推奨されている。

ウクライナ政府は、急速に進行する現状に対応するために全ての行政レベルにおいて対策計画を協調して行えるように、調整機構を立ち上げた。

ウクライナ政府の協力要請によりWHOは、パンデミックのインパクトを緩和するため、国内の保健当局を補助するための多岐に渡る分野の専門家を派遣している。派遣チームは次の専門家で構成されている:医療救急のコーディネーター、症例管理、疫学、実験室診断、ロジスティック、メディア/リスクコミュニケーションで構成されている。

2009年5月のWHOのコミュニケーションにしたがって、渡航制限の合理性は無く、そのような手段で疾患の拡大は予防できない。

旅行者は、呼吸器衛生に注意し、感染拡大の予防を念頭に置いた単純な予防法によって、自分自身を守ることが出来る。各個人は、体調が悪ければ旅行プランを延期することが望ましく、旅行から戻って発病し多場合には、適切な医療を受けるべきである。これらの推奨は良識的な方策で、パンデミック(H1N1)2009ウイルスだけに限らず、多くの伝染性疾患の拡大を抑制することが出来る。



(2009/11/10 IDSC 更新)
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