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パンデミック(H1N1)2009



パンデミックワクチンの方針と戦略についてのWHO専門家アドバイス
パンデミック(H1N1)2009-briefing note その14
原文

2009年10月30日 ジュネーブ

予防接種に関する戦略諮問委員会(SAGE)はワクチンと予防接種についての方針と戦略についてWHOに助言を与える役割をもっている。10月27日から29日のこの会議では、パンデミックインフルエンザワクチンと予防接種についての討議に大きな時間を充てた。専門家たちは現在の世界的なパンデミックの状況を評価し、公衆衛生の視点から問題点と取り得る選択肢について検討した。

議題は、入手可能なワクチンの量、ワクチンの免疫原性の臨床試験の結果及びH1N1パンデミックワクチン接種が現在進行中の国からのワクチンの安全性に関する早期報告に関する検討を含んでいた。

専門家らは、感染に対する防御を誘導するのに必要なワクチンの接種回数、さらに異なる年齢階級における必要な接種回数、季節性とパンデミックワクチンの同時接種、そして妊婦へのワクチン使用についての助言もWHOに行った。また、2010年の南半球の季節性インフルエンザワクチンの推奨株との組み合わせについても示した。


現在の状況
世界的には、10代及び若年成人が患者の大半を占め、乳幼児でもっとも高い入院率を示している。臨床症状を示している患者の1%から10%が入院している。入院患者のうち10%から25%がICUへの入院を必要とし、2%から9%が死亡している。入院者のうち7%から10%が第二または第三妊娠期の妊婦である。妊婦は他の人に比べて、10倍以上ICU治療を必要とする可能性が高い。

これらの報告と他の知見に基づいて、専門家は複数の勧告をした。


1回接種の勧告
専門家らは、弱毒生ワクチン及びアジュバント入りあるいはアジュバント無しの不活化ワクチンを含む複数のパンデミックワクチンが、監督官庁によって使用承認を受けたことを指摘した。SAGEは、もし監督官庁からの指示と齟齬がなければ、成人及び青年期(10歳以上)にワクチンの1回接種を推奨した。
6ヶ月以上10歳未満の子供への免疫原性に関するデータは限られており、さらなる検討が必要である。SAGEは、小児に早期ワクチン接種の高い優先順位を与えている国では、出来るだけ多くの子供に1回接種を行うことを優先するように推奨した。SAGEは、免疫の低下した者について効果的なワクチン接種回数を決定するためには、更に研究が必要であることを強調した。

ワクチンの同時接種
季節性インフルエンザワクチン及びパンデミックインフルエンザワクチンの同時接種は臨床試験が実施されているが、SAGEは米国CDCの推奨事項を認め、弱毒化季節性インフルエンザ生ワクチン及び弱毒化パンデミックインフルエンザ生ワクチンを同時接種すべきでないとした。
専門家は、両ワクチンが不活化されているか、一方が不活化でもう一方が弱毒化生ワクチンであれば、季節性とパンデミックワクチンを同時に接種することは可能であるとした。専門家はワクチンの同時接種により副反応のリスクが高くなることの証拠は無いとした。


ワクチンの安全性
専門家グループはワクチン接種した人々におけるモニタリングの早期の結果を評価し、通常では見られない副反応の兆候は見られなかったとした。ワクチンによるいくつかの副反応は報告されているが、安全性が高いとされている季節性ワクチンに見られる範囲内である。早期の結果がワクチン接種に対して安心出来る結果であったが、副反応のモニタリングは継続すべきである。


妊婦へのワクチン接種
妊婦へのワクチン接種に関してSAGEは実験動物を使用した研究で弱毒化生ワクチン及びアジュバンドなしまたはアジュバンド入り不活化ワクチンの使用は受精、妊娠、胎芽または胎児の成長、出産時、出産後の発達に直接、間接的な有害な影響を及ぼすという証拠がないことを示した。
これらのデータと事実上パンデミックウイルスに感染した妊婦の重症化へのリスクが上昇していることから、監督官庁による特定の禁忌事項が指摘されなければ、SAGEはすべての承認されたワクチンは妊婦に使用することが可能であると推奨した。


2010年の南半球のワクチン
SAGEは2010年の南半球での冬期に使用するワクチンも検討した。

2つの選択肢について評価し、1つはH1N1パンデミックウイルス、季節性H3N2ウイルスとインフルエンザBウイルスの3価ワクチンで、もう1つはH3N2とインフルエンザB型の2価ワクチンで、これは単抗原H1N1パンデミックワクチンを別に追加する必要があるであろう。

専門家は双方のオプションを南半球でのワクチンにおいては利用可能とすべきとし、各国のニーズに従って実施することを結論づけた。



(2009/11/4 IDSC 更新)

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