国立感染症研究所 感染症情報センター
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パンデミック(H1N1)2009



重症患者の臨床像 (10月28日 和訳修正)
パンデミック(H1N1)2009-briefing note その13
原文

20091016-ジュネーブ

パンデミックインフルエンザの臨床像および患者管理に関する情報を収集するため、WHOは10月14-16日の3日間、ワシントンDCにあるPAHO(WHOアメリカ事務局)のヘッドクォータにて会議を開催した。アメリカやヨーロッパ、アジア、アフリカ、中東、オセアニアから約100名の研究者、臨床家、科学者、公衆衛生専門家らにより所見や経験が提示された。

その会議では、世界的に新型H1N1ウイルスに感染したほとんどの症例では、たとえ薬剤を使用しなくても合併症もなく一週間以内に完全に回復していることが確認された。

集中治療の必要性

しかしながら、急速に進行する重症の肺炎を呈する一部の患者層の臨床経過および管理法に現在関心が置かれている。これらの患者では、しばしば重症肺炎が他臓器の障害や基礎疾患としてあった喘息や慢性閉塞性気道疾患の著名な悪化と関連している。重症化した患者の治療は困難を極め、多大な労力と時間を要する。そしてそのことは救急室や集中治療室がパンデミック期に患者の治療において最も重い負担を抱えることを示している。

原発性ウイルス性肺炎が重症例でもっとも共通した所見で死亡の原因である。死亡例の約30%で二次性細菌性肺炎が認められている。呼吸器不全、不応性のショックが最も多い死亡原因である。

会議における提示では、動物実験によって支持された所見とともに詳細な重症例の病理学的検討が行われた。会議中に重症肺炎の病理像の詳細が示され、動物実験の所見もこれらの結果と合致していた。新しいH1N1ウイルスが直接重症肺炎の原因となりうることが確認された

・季節性インフルエンザとの臨床像に関する相違点

重症例管理に携わった参加者は、臨床像がこれまでの季節性インフルエンザ流行期にみられた重症患者のものと大きく異なっていることを認めた。妊娠を含む基礎疾患を有する人々が重症化のリスクであると知られている一方で、もともと健康であった若年層で多くの重症者が発生している。それらの患者では、重症化する危険因子はまだ不明であり、現在調査中である。

重症患者では、一般的に発症して3-5日に悪化し始める。悪化は急速で、多くの患者では24時間以内に呼吸器不全に進行、ICU入室が必要となる。入院に際して、大部分の患者は人呼吸器管理が必要となる。一部の患者では人工呼吸器管理にあまり反応せず、さらに治療が困難となる。

良い情報としては、抗ウイルス薬であるオセルタミビルやザナミビルの迅速な投与が、重症化を軽減させ、生存率を改善するエビデンスが示された。それらの所見は、たとえ確定検査が陰性であっても治療クライテリアに適合する患者に対しては抗ウイルス薬を用いた早期治療を推奨する、以前、WHOから出された治療に関する推奨を裏付けるものであった。

ウイルスによる肺炎に加えて、細菌の共感染が重症化や急速に進行する点に関与している可能性に関するエビデンスが示された。細菌としては、肺炎球菌およびMRSAを含む黄色ブドウ球菌が多く報告されていた。細菌の共感染は当初考えられていたよりも頻度が高く、臨床家は初期治療として市中肺炎に対する予防的な抗生剤治療を考慮する必要性を強調した。

リスクの最も高いグループ

重症化、死亡する最もリスクの高いグループとして、妊婦、特に第3期、二歳以下の小児、喘息を含む慢性肺疾患を有する患者の3つのグループであると参加者らは同意した。神経系疾患は、小児において重症化リスクを増加させる可能性がある。

少数民族や先住民族といった不利な環境下にいる層で不釣り合いに重症化しているエビデンスが示された。理由はよくわかっていないが、糖尿病や喘息といった基礎疾患がこの層で高頻度に認められることや、医療アクセスが悪い点が調査されている理由として挙げられていた。

正確な機序はよくわかっていないが、肥満、特に病的肥満が重症例・死亡例で高率に認められた。季節性や、これまでのパンデミックで肥満はリスク因子としては認められてこなかった。

WHOとその協力機関は、途上国がパンデミックインフルエンザウイルスによって起こる疾患の検索と治療をより行いやすくするために技術的および実務的なサポートを提供している。医療資源が限られている条件下で提供できる患者ケアに関するアドバイスは迅速に適応されている。





(2009/10/28 IDSC 更新)

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