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パンデミックインフルエンザワクチンの現状
パンデミック(H1N1)2009-briefing note その11
原文

2009年9月24日(ジュネーブ)-オーストラリア、中国、アメリカの監督機関は、パンデミックインフルエンザワクチンを認可し、日本やヨーロッパの国々も間もなくこれに続く見込みである。認可までの時間は、各国の手続きに要する時間、これまでに認可されてきたワクチンの種類、企業の監督機関に提出する書類準備の進捗状況により左右される。

生産能力

2009年5月、WHOは条件が整えば、世界中で最大、約年間50億ドーズのパンデミックインフルエンザワクチンが生産可能と推計した。その後、生産量に関する良い情報と適切なワクチン成分が得られた。

WHOは現在、世界中のパンデミックインフルエンザワクチンの生産量を、おおよそ年間30億ドーズと推定している。この推計値は当初の予定より少ないが、治験の初期段階の結果を見ると、ワクチン1回接種で健康な成人と年長小児が疾病予防に十分な免疫力を獲得できることが示唆され、その結果、現状の予定生産量の倍の人々を守ることができることになる。

この生産量では、新型で感染能力をもったウイルスから、事実上感染性のある全人口(68億人)をワクチン接種により予防するには不足している。世界のインフルエンザワクチン生産能力は限られており、不十分で、増産される気配はない。

パンデミックワクチンはアウトブレイク前あるいはピーク近くに、他の予防戦略と合わせて導入されると最も有効である。監督機関とワクチン製造者双方がワクチン生産量をできる限り増やせるように多大な努力を行なっている。

多くの経済的に裕福な国は、事前に企業と契約し、全国民に接種できるだけのワクチンを確保している。しかし、低あるいは中所得国では、財政的に厳しい状況にあるため、限られたワクチンを入手することは困難である。これらの国へのワクチンの供給は企業や他の国々の寄付に寄与するところが大きい。

途上国でのワクチン接種の可能性

先週、アメリカに呼応してオーストラリア、ブラジル、フランス、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、そしてイギリスが途上国へのパンデミックワクチンの寄付を表明した。他の国々からの同様なサポートは、大歓迎であり、期待している。

WHOはこれら寄付されたワクチンの分配を調整している。以前、WHOは地域事務局や各国事務局を通じて、寄付が無ければパンデミックワクチンを入手できない国を調査した。

フィールド接種計画、ワクチン、ロジスティックの専門家がWHOのSHOCルーム(訳注:Center for Strategic Health Operations; 戦略的行動本部)に集って作業を進めている。最初の段階として、90カ国以上の国々におおよそ3億ドーズのワクチンを分配する。

寄付されたワクチンの最初の出荷分の分配は11月に開始されると予測されている。WHOは、医療従事者の早期のワクチン接種を推奨している。

ワクチンの安全性

各国の医薬品の監督機関は、ワクチンを承認する前に注意深くワクチンによって得られるメリットと既に知られている、あるいは疑われている有害事象について検証すべきである。なぜならパンデミックウイルスは新しく出現してきたばかりである為、ワクチンの免疫応答と安全性の基本データ収集のため、今現在、実験室での研究や治験が行なわれているからである。今日までにまとめられている治験のデータでは、パンデミックワクチンは季節性インフルエンザワクチンと同程度安全であるとされている。

ワクチン接種後の副反応も季節性インフルエンザワクチンで見られる結果と同程度であると予想される。最も良く認める副反応は接種部位の局所反応(疼痛、腫脹、発赤)と、全身性反応(発熱、頭痛、筋肉痛または関節痛)である。これらの症状を呈したほとんどの人の症状は軽く、治療を必要とはせず、1~2日で軽快する。

しかし、たとえ大規模の治験を行なっても、何億の人にワクチンを接種することで認められるような稀に起こる事象を突き止めることはできない。

WHOは、パンデミックワクチンを導入する全ての国々に対して、安全性のモニタリングと、有害事象発生時の報告を強化するように助言する。多くの国は、既にワクチンの安全性をモニターするシステムを既に導入している。

市販後サーベイランスのデータを国際的に共有することは、ワクチン政策の変更が必要かどうか、リスクと有益性の評価に基づくアセスメントや決定に重要である。WHOはこれらの有害事象報告と迅速なデータ収集のために、共通の標準プロトコール開発を完了し、その結果をウェブサイトを用いて各国と情報を共有する。




(2009/10/3 IDSC 更新)

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