国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ


H1N1インフルエンザの状況

WHO事務局長 Margaret Chan博士

(2009年5月4日) WHO(原文

 H1N1インフルエンザの状況に関する国連総会に対する事務総長のブリーフィングにおける論述、スイス・ジュネーブからテレビ会議にて、2009年5月4日。

 国連総会会長Miguel d’Escoto Brockmann氏、国連事務総長Ban Ki-moon氏とそのスタッフ、そのほかの皆様、

 まず初めに、この会議に私を招待してくださった事務総長に感謝いたします。また、このような発言の機会を与えてくださいました会長にも感謝いたします。私はジュネーブのWHO本部内にあるSHOC室(訳註:Center for Strategic Health Operations, 戦略的行動本部)から話しております。

 新型H1N1インフルエンザウイルスによって影響を受けている国々の方に対して我々は気の毒に思っております。

 皆様、ここでは、現在の状況、我々のおかれた立場、そして世界の今後の展望についてお話いたします。

 インフルエンザパンデミックは、全く新しいウイルスか、ここ数十年人の間で流行しなかったウイルスによって引き起こされます。これはつまり、世界中のほとんどの人がこのウイルスに感受性があることを意味します。この世界的な感受性の高さこそがインフルエンザパンデミックの恐ろしさです。

 多くの人が病気になることは、経済活動への多大な混乱をきたし、通常の医療業務の破綻を招きます。

 現時点で、WHOは1003例のH1N1インフルエンザ感染確定症例の報告を、4大陸、20カ国から受けています。この場において、H1N1症例をWHOに報告して下さったすべての国々に対し、その協力と情報の透明化に感謝いたします。

 すべての国々は、非常に責任のある行動を取っています。WHOと協力してメキシコを、特に検査室診断の面でサポートして下さったカナダとアメリカ合衆国に対して、特別に感謝の意を表します。

 世界はいまフェーズ5であります。これの意味するところは、我々は引き続きウイルスに対し高い警戒を保ち、ウイルスの国際的な広がりや、すでに感染が報告されている国の国内での感染拡大をしっかりと監視することにあります。

 フェーズ6、つまりパンデミックの状況になるまでどれぐらい時間があるのか全くわかりません。まだその状況にはありません。定義では、北米以外の地域で明らかな市中での感染が認められたときが、フェーズ6に切り替わる時です。

 我々は、いくつもの不確定要素に直面していますが、いくつかわかっていることもありますので、ここで共有させていただきます。

 わかっていることの一部は、過去のパンデミックの様子から得られたものです。他のものはこの新型H1N1ウイルス固有のものであり、各国の感染患者から得られたものや、研究室でウイルスを取り扱って得たものです。

 これらの情報は、現在の状況の理解に役立ちます。ただし、過去のパンデミックからの教訓として、最初の状況は、時には大きく驚ろかされるような変化を伴うことがわかっているので、注意が必要です。

 歴史的にみて、インフルエンザパンデミックは2波、時には3波、地球を巡りました。前世紀に関して言えば、1918年のパンデミックは、パンデミックの中でももっとも猛威を振るったものですが、穏やかな第1波で始まり、ずっと致死性の第2波で戻ってきました。実際、第1波があまりにも穏やかであったため、警告サインとしての第1波の重要性が軽視されました。

 ご覧のように、今日の世界では、そういった警告サインに対する警戒は当時とは比べ物にならないぐらい高く、対応策の準備も進んでいます。

 1957年のパンデミックも、第1波は比較的穏やかでしたが、第2波ではいくつかの国で高い致死率でありました。1968年のパンデミックでは、ほとんどの国で第1波、第2波ともに比較的穏やかでした。

 現時点では、我々が1918年の状況と同じような状況に直面していることを示す証拠はありません。しかし、私がここで繰り返し強調しなくてはならないことは、この状況は変化しうるということです。それは、我々が今の状況を過大評価あるいは過小評価しているからではなく、単にインフルエンザウイルスが常に予測できない変化をしているからです。

 インフルエンザウイルスについて一つだけ自信を持って断言できることは、インフルエンザウイルスの変化は全く予想がつかないということです。現時点では、今回のパンデミックが今後どのように進展していくか予想できる人は誰もいません。

 このために、国際機関や国の機関の保健担当者は、早急に長期的な判断を下さなくてはならないが、通常持ち合わせていたいと我々が考える確固たる科学的な根拠のようなものを全く持っていないという、大変難しい立場におかれています。

 皆様、

 皆様ご存知の通り、インフルエンザパンデミックが今日の世界経済へ与える影響を予測しようという努力がなされています。これらの推測は、ウイルスの病原性に関する仮定によって大きく左右されます。

 しかし、どの推測もある一点の認識を共有しています。それは、経済が最も影響を被るのは、一般の人々が感染予防に向けて一致協力しない場合である、ということです。ここでも再び、この大きな科学的不確実性のさなかにおいて、助言を出し不安を沈めるようにすることを、我々が行う義務を負っています。

 WHOは本部、地域事務局において、これまでに訓練してきた計画を実行に移す準備を整えています。WHOは状況が変わるごとに情報を集め、公開しています。警戒力と正確な情報が現段階では最も重要です。

 準備という点では、新しい国際保健規則があるということは、世界にとって非常に喜ばしいことです。公衆衛生を守るために作られたこの条約は、国際貿易や旅行に対する過度の介入を防ぐ目的で作成されています。

 これらの点を考慮し、ここでは各国の方々に、科学的に根拠がなく明確な公衆衛生上の利益をもたらさないような、経済あるいは社会を破壊するような方策を行なわないよう、強く嘆願します。

 理性の伴った対応が最善です。特に経済が下降気味のときはなおさら重要です。

 もしこのパンデミックが緩やかな波で始まったとすれば、各国や企業にワクチンや抗ウイルス薬、その他不可欠な物品を貯蓄する猶予を与えてくれます。

 しかし、率直に申し上げて、世界の企業の生産能力は非常に拡大したものの、現時点では世界のすべての人を守るだけの抗ウイルス薬やワクチンを生産するには十分でありません。

 これは現実です。しかし、私達はこれらのものを賢明にしかも本当に必要とする人に絞って提供するよう指南し、供給を維持し、抗ウイルス薬に関しては耐性株の出現を抑えるためのデータを得ることは出来るのです。

 インフルエンザパンデミックは世界の団結が必要となる世界的な出来事です。WHOの技術的および管理的な担当官の長として、発展途上国の人達が予防策からもれないように出来る限りの事を行なうのが私の任務です。

 生れた場所の違いだけで、救いの手が差し伸べられない人が生じないようにするのが私の責務です。私は製薬会社と積極的かつ継続的に協働し、治療薬とワクチンがもし必要ならばこれらの人にも届くようにします。

 改めて、警戒を維持し対応を強化していくにあたり、協力してくださっている世界各国、すべてのパートナー、事務総長をはじめとする国際連合関係機関の皆様に感謝いたします。

 ありがとうございました

(2009/5/10 IDSC 更新)

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