国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報
高病原性鳥インフルエンザ



ブタインフルエンザに関するよくある質問

      2009年4月26日 WHO(原文


 2009年4月26日

  • ブタインフルエンザとは何ですか?
  • ヒトの健康に影響を及ぼすものは何ですか?
  • ヒトの症例はどこで発生していますか?
  • ヒトはどのようにして感染するのでしょうか?
  • 豚肉や豚肉の加工品を食べても安全ですか?
  • パンデミックのリスクはどんなことですか?
  • ブタインフルエンザ予防にヒトへのワクチンはありますか?
  • 治療にはどんな薬が利用可能ですか?


ブタインフルエンザとは何ですか?

ブタインフルエンザまたは「ブタフル」はブタで感染力が強い急性の呼吸器疾患で、いくつかのブタインフルエンザA型ウイルスによって引き起こされます。有病率は高く、死亡率(1〜4%)は低い傾向にあります。ウイルスはエアロゾル、直接接触、間接接触及びウイルスを保有している無症候性のブタによりブタの間で広まります。ブタのアウトブレイクは温帯で秋期及び冬期に増加し、1年中発生します。多くの国々でブタインフルエンザ予防のためにブタの集団に定期なワクチン接種を行います。

 ブタインフルエンザウイルスは通常ほとんどの場合H1N1亜型ですが、他の亜型(例、H1N2、H3N1、H3N2)もブタの中で循環しています。さらにブタは、ブタインフルエンザウイルスと同様に鳥インフルエンザウイルスやヒトの季節性のインフルエンザウイルスにも感染します。H3N2ブタウイルスは起源をたどるとヒトによってブタにもたらされたと考えられています。時折、ブタは1度に1つ以上の型のウイルスに感染することが可能であり、これらのウイルスの遺伝子が混ざり合うことが可能です。これによって、複数の元になるウイルスの遺伝子を含むインフルエンザウイルスが発生しますが、それは“再集合体”ウイルス("reassortant" virus)と呼ばれています。ブタインフルエンザウイルスは通常宿主特異性がありブタにのみ感染しますが、ブタインフルエンザウイルスはヒトにおいて時々種の壁を越えてヒトに疾病を引き起こします。



ヒトの健康に影響を及ぼすものは何ですか?

 
ブタインフルエンザのヒト感染のアウトブレイク及び散発例は時々報告されています。一般的に、臨床症状は季節性のインフルエンザと類似していますが、無症候性感染から重症肺炎で死亡に至るまで幅広い臨床症状を呈します。

 ヒトへのブタインフルエンザ感染の典型的な臨床症状は季節性のインフルエンザ及び他の上気道感染と類似し、症例のほとんどは季節性のインフルエンザのサーベイランスを通じて偶然に検出されています。軽症または無症候性の症例は覚知されていないかもしれません。従って、ヒトでのブタインフルエンザの真の感染状況は知られていません。



ヒトの症例はどこで発生していますか?

2007年に改正した国際保健規則[IHR(2005)]1)の発効以来、WHOはアメリカ合衆国及びスペインからブタインフルエンザ症例の報告を受けています。




ヒトはどのようにして感染するのでしょうか?

ヒトは感染したブタからブタインフルエンザに感染しますが、ブタやブタがいる環境との接触歴がない症例もあります。ヒトからヒトへの感染は、いくつかの事例で発生していますが、濃厚接触者及び閉じられた集団に限定されています。



豚肉や豚肉の加工品を食べても安全ですか?

豚肉や豚肉の加工品を食べても安全です。ブタインフルエンザは、適切に扱われ、調理された豚肉または豚の加工食品を摂取することに由来した感染は見られていません。ブタインフルエンザウイルスは、ブタ及び他の肉の調理の一般的な手引きと同様に華氏160度/摂氏70度の温度で調理することで殺滅されます。



ブタでアウトブレイクが発生した国はどこですか?

ブタインフルエンザは、国際的な動物衛生当局(国際獣疫事務局、OIE、http://www.oie.int)に対する報告義務がないため、動物における国際的な分布はよく分かっていません。本疾患は、アメリカ合衆国で地域的な流行であると考えられていました。ブタのアウトブレイクは、北アメリカ、南アメリカ、ヨーロッパ(イギリス、スウェーデン及びイタリアを含む)、アフリカ(ケニア)、及び中国及び日本を含む東アジアで発生したことが知られています。



パンデミックのリスクはどんなことですか?

特にブタと日常的に接触のない多くの人は、ウイルス感染を予防することが可能なブタインフルエンザに対する免疫を持っていないと考えられます。もし、ブタインフルエンザウイルスがヒトからヒトへの感染を効率的に起こすならば、インフルエンザのパンデミックを引き起こすことが可能になります。このようなウイルスによって引き起こされるパンデミックの影響は、予想が困難です。ウイルスの毒性、ヒトにおいてすでに存在する免疫状態、季節性のインフルエンザ感染で獲得した抗体による交差防御、および宿主の要因によります。



ブタインフルエンザ予防のヒトへのワクチンはありますか?

ヒトに病気をひきおこしている現在のブタインフルエンザウイルスを含んでいるワクチンはありません。現在のヒトの季節性インフルエンザワクチンがブタインフルエンザ予防に効くかどうかについては分かっていません。インフルエンザウイルスは非常に迅速に変化します。ワクチンを接種したヒトへの最大の効果をもたらすためには、現在循環しているウイルス株に対するワクチンを開発することが重要です。そういった理由でWHOは、最も適切なワクチンウイルスの候補を選定するために、可能な限り多くのウイルス収集を必要としています。



どんな薬が治療に利用可能ですか?

季節性インフルエンザに対する抗ウイルス薬は、いくつかの国で利用可能であり、効果的な予防及び治療が行われています。抗インフルエンザ薬は2種類あり、1)アダマンタン(アマンタジン及びリマンタジン)と2)ノイラミニダーゼ阻害剤(オセルタミビル[訳註:商品名タミフル]及びザナミビル[訳註:商品名リレンザ])です。
これまでに報告された症例のほとんどは、治療及び抗ウイルス薬なしで疾患から完全に回復しています。
いくつかのインフルエンザウイルスは抗ウイルス薬の耐性を持っており、予防及び治療に限界があります。アメリカ合衆国での最近のブタインフルエンザヒト感染症例から採取したウイルスは、オセルタミビルとザナミビルに感受性がありますが、アマンタジンとリマンタジンに耐性です。
ブタインフルエンザウイルス感染の予防と治療における抗ウイルス薬の使用に関する勧告を作成するための情報は不十分です。臨床医は、臨床症状及び疫学的評価、および患者の予防と治療の危険性と効果に基づいて判断しなければなりません2)。アメリカ合衆国及びメキシコでのブタインフルエンザ感染のアウトブレイクが継続していることに関して、政府と地方の保健当局はウイルスの感受性の試験に基づいて疾患の治療及び予防にオセルタミビルまたはザナミビルの使用を推奨しています。

1) 国際保健規則(2005)http://www.who.int/ihr/about/en/

2) インフルエンザに特異的な抗ウイルス薬の効果と危険性に関して下記サイトを参照
http://www.who.int/csr/disease/avian_influenza/guidelines/pharmamanagement/en/index.html




(2009/4/28 IDSC 更新)
 * 情報は日々更新されています。各ページごとにブラウザの「再読み込み」「更新」ボタンを押して最新の情報をごらんください。

Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.