第1部要約
新型インフルエンザの発生状況を把握し、臨床・疫学的特徴を明らかにし、感染拡大防止対策につなげるために、神戸市、兵庫県における新型インフルエンザ患者からの聞き取り調査や神戸市保健所等からの情報収集を行った。
神戸市も含めた兵庫県全域で、新型インフルエンザの確定例(定型・非定型)は6月5日までに199名(男性65.3%、女性34.7%)、15〜19歳が71.9%を占め、感染の中心は高校生であった。兵庫県における流行曲線では、5月5日発症の確定患者が初めて検出され、5月17日にピークを形成した後、兵庫県全域で実施された学校休業に伴い症例数は減少した。神戸市で最初の確定例が確認された5月16日には、兵庫県いくつかの地域ですでに確定例が認められた。
初期に入院した患者49人について、発熱、咳、全身倦怠感、咽頭痛を示すものが70%以上に認められた。48例に抗インフルエンザ薬が投与され、1週間以内で症状が軽快するものがほとんどであった。患者の大半は感染症法に基づく入院で、基礎疾患のない若年者に集中しており、人工呼吸管理を要するような重症例は認められなかった。
感染源及び接触日が特定できる事例から、二次感染が疑われる事例は除外して検討したため短めに評価されている可能性があるが、潜伏期は1−4日(中央値2日)と推定された。同居家族全体における発症割合は7.0%であるのに対し、10〜19歳では21.6%と高かった。初発患者が発症してから家族内発症者の症状出現まで、中央値3日(範囲1−5日)であった。同居家族における感染者は接触者調査時すでに発病するなどして、予防内服は実施されていなかった。初発患者の症状出現から2日以内に予防投与が開始されたものは29%にとどまったが、予防投与が実施されたものから発症者はなかった。
神戸市環境保健研究所でRT-PCRにより検査された検体の新型インフルエンザ(A/H1N1 pdm)陽性割合は、15-19歳の年齢階級で高かったが、他の年齢層に感染が広大する所見は確認されなかった。
流行の早期探知、重症患者の検出のためのサーベイランスの強化、予防投薬の実施体制の整備、関係機関での情報共有と連携、リスクコミュニケーションによる情報・知識の共有が望まれた。
(2010/1/7 IDSC 更新)
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