国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ



医療機関におけるハイリスク者に関する 感染防止策の手引き

          
2009年6月1日

国立感染症研究所感染症情報センター

I はじめに

 この手引きは、新型インフルエンザA (H1N1)が発生している地域において、基礎疾患のある者や妊婦(以下、「ハイリスク者」と言う。)をできるだけ感染から守るために、医療機関において推奨される対策を示すものである。

 現在発生している新型インフルエンザA (H1N1)は、通常のインフルエンザと同様の感染性と強い伝播力があるとされているが、多くの患者が軽症のまま回復している。しかし、海外においてはハイリスク者において死亡を含む重篤化例が報告されている。よって、今後の医療体制の重要な目標として、ハイリスク者への感染をできるだけ防止することが挙げられる。

 なお、この手引きは現在までの知見に基づく暫定的なものであり、今後知見が積み重なるにつれてその内容が変更される可能性がある。


II 外来部門において推奨される対策

1.全ての医療従事者が標準予防策に加えて飛沫予防策を実施する

 全ての医療従事者が標準予防策を徹底する。加えて、新型インフルエンザに感染しているかどうかに関わらず、全ての患者のケアに際してサージカルマスクを着用する等、飛沫予防策を実施することを考慮する。


2.発熱患者とその他の患者の動線を分ける

 すべての医療機関において、すべての外来患者に対する発熱等の症状のスクリーニングを行うこと。たとえば、医療機関の入り口に近いところで、発熱や呼吸器症状の有無をチェックし、これを認める者については別室や他の患者から離れたエリアに誘導する。

 とくに発熱外来を担当する医療機関は、入口を分ける、時間帯を分ける等により発熱患者とその他の患者との動線を分けるようにし、また、来院者にこれを周知する。


3.ハイリスク者へは長期処方をすることによりその受診を回避する

 患者発生が少数である時期より、すでにコントロールがついているハイリスク者については可能な限り長期処方を行って、急速に患者数の増加がみられる時期に医療機関を受診する機会を極力減らすように調整する。


4.ファクシミリ等による処方せんの送付について検討する

 
事前にかかりつけの医師が了承しておくことで、発熱等の症状を認めた際に、電話等による診療により新型インフルエンザへの感染の有無について診断できた場合には、診察した医師はファクシミリ等により抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんを患者が希望する薬局に送付することができる。

 また、とくにハイリスク者については感染源と接する機会を少なくするため、一般的に長期投与によって、なるべく受診間隔を空けるように努めることが原則であるが、電話等による診療により診断ができた場合、診察した医師はファクシミリ等による慢性疾患等に係る処方せんを患者が希望する薬局に送付することができる。


III 入院部門において推奨される対策

1.発熱患者とその他の患者の病床エリアを分ける

 診断がついているか否かによらず、発熱する患者については新型インフルエンザの可能性があるものとして、院内のエリアを分ける工夫が推奨される。また、ハイリスク者が発熱した場合についても、発熱している入院患者のエリアに移動させる等して、院内感染の拡大を予防する。


2.ハイリスク者の診療を担当する医療従事者はサージカルマスクを着用する

 全ての医療従事者が標準予防策を徹底することが大切であるが、ハイリスク者の診療を担当する医療従事者は、常にサージカルマスクを着用しておくことが望ましい。


3.ハイリスク者の待機的入院を控える

 急速に患者数が増加している時期において、医療機関は、ハイリスク者の教育や検査目的の待機的入院や延期することが可能な手術を控えることが望ましい。ただし、これらの延期については患者自身の同意のもとに決定する。


4.ハイリスク者が入院する病棟への不要不急の見舞いを制限する

 急速に患者数の増加がみられる地域では、ハイリスク者が入院する病棟への不要不急の見舞いを制限することで、ウイルスが病棟内に持ち込まれる可能性を極力減らすように協力を求める。

 主治医が必要と認める見舞い客については、事前に発熱もしくは呼吸器症状がないことを確認する。また、院内では常にサージカルマスクを着用するように協力を求める。


IV ハイリスク者に勧める感染対策

1.感染防止策についての正しい知識を身につける

 新型インフルエンザやその感染防止策に対する正しい知識を持つため、テレビ、新聞等のマスメディアやインターネットなどにより情報収集を行うとともに、居住地域の状況については、地方自治体の提供する情報の収集に努めるよう勧める。また、自らの持病についてもよく理解し、主治医の指導に従った生活習慣と内服等を維持するよう、勧めることはもっとも大切である。


2.医療機関を受診する場合には事前に電話をかける

 急速に患者数が増加している地域で受診を希望する場合には、緊急時を除き、なるべく事前に電話をかけてかかりつけの医師から受診すべきかの判断を求めるように勧める。また、受診の予約をすることで、医療側は長時間にわたり院内で待つことがないようにする。


3.院内ではサージカルマスク着用と手洗いを心がける

 発熱外来に限らず、すべての医療機関において新型インフルエンザに感染している患者が受診している可能性があるものと考え、医療機関を受診する場合には必ずサージカルマスクを着用することを勧める。さらに、こまめに手洗いもしくはエタノール等による手指消毒を心がけてもらう。


4.待合室では他の患者から離れた場所に座る

 医療機関において指定されたエリアがない場合には、なるべく他の患者からは離れた場所で診察の順番を待ってもらうよう誘導する。

 なお、本手引きの使用にあたっては、厚生労働省から発出されている以下の資料を参考とされたい。


●医療体制

  1. 医療体制に関するガイドライン(厚生労働省・平成21年2月17日)http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/guide/090217keikaku.pdf
  2. 新型インフルエンザ感染者の増加に伴う医療機関における外来診療について(厚生労働省・平成21年5月22日) http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090523-07.pdf
  3. 医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針(厚生労働省・平成21年5月22日)http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/090522-03b.pdf
  4. ファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの取扱いについて(厚生労働省・平成21年5月22日)http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090523-05.pdf


●院内感染対策

  1. 医療施設等における感染対策ガイドライン(厚生労働省・平成19年3月26日) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/09-07.pdf
  2. 新型インフルエンザに関する院内感染対策の徹底について(厚生労働省・平成21年5月21日)http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/infu090521-05.html


●その他

  1. 重篤化しやすい基礎疾患を有する者等について(厚生労働省・平成21年5月22日)http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/dl/infu090523-04.pdf

 

 



(2009/6/1 IDSC 更新)
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