国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報
高病原性鳥インフルエンザ



新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況−更新10

          
2009年6月9日

国立感染症研究所 感染症情報センター

 WHOによると、2009年6月8日午前6時00分(世界標準時)現在、確定症例は世界73カ国から25,288例が報告されており、139例の死亡が報告されている(致死率:0.5%)。地域内伝播(疫学的リンクの切れた人-人感染)に関しては、これまでメキシコ、米国において確認されているが、WHOによる6月2日のプレスカンファレンス資料によると、英国、スペイン、日本、チリ、他にオーストラリアなどは、“more established community types of transmission(より確立したコミュニティータイプの伝播)”が発生している国に含まれるとしている。各国におけるサーベイランスの状況、軽症例における受診行動やサーベイランスにおける把握状況、あるいは対策の方針は国によって異なるため、その国内地域ごとの状況を正確に評価するのは容易ではない。

 日本国内では、6月9日午前9時の時点で、444例の確定例が報告されている(厚生労働省確認分、他に成田空港検疫所確認分が8例ある)が、報告数は時間と共に変化している。発生が確認されている都府県は、16に上り、それぞれの地域によって感染伝播の状況は異なる。また、現在の日本の交通状況を考えれば、早晩他の地域に伝播していく可能性は高い。現在、国内では、一例の確定例もでていない地域、渡航者からの散発例の出ている地域、地域内での感染で散発例、あるいは集団発生の出ている地域、より広範な感染伝播が疑われる地域が存在する。

 これまでに100例以上の新型インフルエンザ患者確定例が報告された都道府県レベルの自治体として、兵庫県(200)および大阪府(161)がある。同じく10例以上が報告された自治体としては、福岡県(17)、千葉県(15)、東京都(10)があるが、特に福岡県は福岡市において6月6日より小中学生を中心とした集団発生であり、メディアの情報ではこの倍程の発熱症状を訴える学童・生徒が居るようである。今後同市における確定患者がさらに多数に上る可能性がある。福岡市における集団発生事例は、神戸市・大阪府以降としては最大の規模である。この集団発生以外で、例えば船橋市における中学生の集団発生の状況の情報(9日午後6時現在累計9人)などの情報があり、また東京都の症例と同じパーティに参加した者における二次感染と思われる小集団発生も見られる。すなわち、各地で散発を繰り返しながら、時々集団発生として検出される状況である。

 船橋市における事例の感染源は不明とされており、そのほかにも横浜市で発症した事例や、東京に滞在していた滋賀県の事例など、感染源が不明な事例が発生している。この状況は、わが国の国内の一部地域で感染が拡大しつつある状況を示している。なお、現在国内では依然として季節性インフルエンザの発生が、地域によって種々のレベルでみられている。

 6月9日午前9時現在まで、国内においては死亡例および気管内挿管による人工呼吸器管理などを要する重症例は報告されていない。しかしながら、今後患者数が増加していく場合、すなわち米国並の死亡率(0.2%)であれば500人ほど、カナダ並の死亡率(0.1%)であれば1000人ほどの患者発生がある場合、死亡例を含む重症例が発生する可能性があることに留意する必要がある。特に基礎疾患を有する者、妊婦、小児などが重症化しやすいとされており、これらに該当する新型インフルエンザ患者に対する注意が必要である。一方で、重症化するリスクが低いと考えられる者に対しては入院措置を解除し、医療機関や保健福祉部局に過度の負担をかけないような対応も、“2類相当”である本疾患の現状を鑑みながら、柔軟に行っていく必要がある。現在の発熱相談・発熱外来のあり方がどの程度有効かを検討し、柔軟かつ効果的なサーベイランスおよび検査体制の確立が急務である。




(2009/6/10 IDSC 更新)

 * 情報は日々更新されています。各ページごとにブラウザの「再読み込み」「更新」ボタンを押して最新の情報をごらんください。

Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.