国立感染症研究所 感染症情報センター
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高病原性鳥インフルエンザ



2009年インフルエンザA(H1N1)ウイルスのヒト感染に対するCDCの暫定的な手引き:幼稚園から高校及び保育施設の閉鎖に関する更新

      アメリカ東部時間2009年5月1日午後4時35分更新 
               CDC(原文


訳注:本文書はすでに改訂されている。参照および比較の目的のみでこの翻訳を掲示している。


  このガイダンスは現在得ている情報を基に作成されており、進行中のサーベイランスとリスク評価に基づいて内容が変更されることがあることを留意されたい。


背景

  20094月にアメリカとメキシコで初めて人の間で新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスが循環していることに関する新たな情報をもとに、この文書は州や地域社会における暫定的な行動計画の手引きの更新版を提供するものである。これは幼稚園から高校までの学校閉鎖や子供向けのプログラムや施設の閉鎖に関する勧告や、社会的被害軽減の介入について既に発表済みの手引きを更新するものである(2009429日:http://www.cdc.gov/h1n1flu/mitigation.htm)。 学級閉鎖や保育施設の閉鎖は、アメリカにおける2009H1N1ウイルスのアウトブレイクの際に感染伝播やそれに関連した罹患率および死亡率を低下させるために行なわれる、包括的かつ重層的な被害軽減策の重要な一部分を成す。

  この作戦の目的は、地域においてウイルス感染拡大のスピードを遅らせ、1)新型ウイルスに対するワクチンの製造と供給までの時間稼ぎをするためにウイルスの流行のピークを遅らせる、2)特定地域においてこのウイルスにかかり病気になる人の数を減らすことで医療体制に患者が押し寄せるという状態をできるだけ避ける、3)病気になる人や死亡者の総数を減らすことである。

  住民を守るため、地域社会が現在ある情報に基づいて行動することは重要である。これらの地域レベルでの被害軽減の介入策は、地域の保健当局が州やコミュニティの協働者と共に地域の状況に合わせて使用することができるよう、段階的でありかつ柔軟なものである。アメリカ合衆国の公衆衛生行政担当者がこの新興ウイルスについて理解を進める中で、CDCは毎日その結果を検討し、州や地域のパートナーとともに手引きを更新していく。

  学校はその生徒や教員、そして地域をH1N1インフルエンザのような感染性の病気から守る重要な役割を果たす。子供はこの新しいウイルスに非常に感染しやすいため、学校は地域の中でこの新しいウイルスが広がる拡大拠点になりかねない。HN1のアウトブレイクに際し学校閉鎖を行うのは、ウイルスの拡散を低下させるためである。しかし、この新しいウイルスがさらに地域で感染拡大することを防ぐ点において、学校閉鎖がどれほど効果があるのかに関する情報は、現時点ではあまりない。加えて、このウイルスがどれほど重篤な症状を引き起こすかもまだはっきりしていない。

  学校閉鎖や保育施設の閉鎖を決める機関は州や地域によって異なり、また例えば教育長や市長、州知事や危機管理官、または公衆衛生行政担当者など様々な分野にわたる。


学校や学区、地域で2009H1N1ウイルスが確認された場合の勧告

  CDCは、インフルエンザA(H1N1)ウイルス感染の検査確定症例が認められた地域が、以下のガイドラインに沿って学校閉鎖や保育施設の閉鎖介入の開始を検討することを勧告する。「症例が認められた地域」とは、アメリカの州や隣接した疫学的地域(例えば州境をまたいで広がる大都市部など)を含む。このガイドラインは、州や地域の行政単位でそれぞれの地域の状況に応じて(感染者数や重症度、感染しているグループなど)柔軟かつ段階的に対応できるように作成されている。


感染地域における段階的学校閉鎖および保育施設閉鎖に関する勧告

  学区は地域や州の公衆衛生行政担当者と緊密かつ直接的に協力し、以下の点を考慮しつつ協調的に確固たる決断をし対応策を実行すること:

1. 生徒を帰宅させ保育施設を閉鎖し、引き続き以下に述べる対策を実行することに関する決断は、疾患の拡大状況や重篤さに基づいてなされるべきであること

2. 地域行政当局が学校や保育施設の閉鎖を行うか否かの決断を行うこと

3. 決断を行う当局者が州や地方行政の様々な部門にいるかもしれず、そしてそれらが十分に連携しなければならないこと


暫定的な勧告

○感染者(生徒や教職員の)は病院で治療を受ける以外は家に止まり、学校や保育施設が平常通りに運営されている、あるいは生徒が帰宅させられている、あるいは閉鎖されているに関わらず、学校へは近寄らない。

○地域での疾患の拡散を低下させるために、生徒や教職員の中に検査確認されたかまたは株の亜型の特定が不可能なインフルエンザAウイルス症例が1人でも発生したら、学校は生徒を帰宅させ、保育施設は閉鎖することを検討すべきである。

○まだ感染者が見られない学校でも、生徒や教職員の中に検査確認されたかまたは株の亜型の特定が不可能なインフルエンザAウイルス症例が1人でも発生した学校や保育施設が同じ地域に1校以上ある場合、生徒を学校から帰宅させることや保育施設の閉鎖を検討すること。これは、まだ検査確認された感染者がまったく確認されていない学校もふくめ、その地域の学校から先制的に生徒を帰宅させることを意味する。

○生徒を帰宅させる学校の近隣他校も、検査確認された症例がいなくても先制的に生徒を帰宅させることを検討すべきである。その際検討すべきは、地理的距離やその地域の学校で生徒同士の接点がどの程度あるかなどである。

○学校から生徒が帰宅させられたり、保育施設が閉鎖されたりした場合、学校や保育施設に関係する集会等も中止すべきである。父母と生徒は学校外で大勢の人で集まることを避けるべきである。

  学校が生徒を帰宅させたり保育施設が閉鎖されたりした場合、学校や保育施設の閉鎖は、地域や州の公衆衛生行政担当者とよく相談した上、疾患の状況や重篤さに応じて最大14日間の閉鎖を行うこと(学校閉鎖の期間に関する更なる手引きを遅くとも58日までには掲載する。)この期間が推奨される理由は、子供が発症後710日間他に対して感染性をもつであろうことである。学校は地域および州の公衆衛生行政担当者と相談し、地域のインフルエンザのサーベイランス情報や新たな感染者情報に基づき、登校停止または閉鎖の延長をすべきかどうかを毎日検討すべきである。

  重要な点を繰り返すと、地域における学校閉鎖に関する判断は適切な当局者の判断にゆだねられているが、必ず地域や州の公衆衛生行政担当者に相談し、かつ地域においてH1N1による感染の拡大と程度を考慮に入れるべきである。学校や保育施設は再開の手引きに関して地域や州の保健部局に相談すること。学校が再開した際には、階段の手すり、エレベーターのボタンやドアノブなどの頻繁に接触する表面を、学校で通常用いられている洗剤ベースの清掃剤またはEPA(アメリカ連邦政府環境保護庁)が認可している消毒剤で清拭し、清潔に保つこと。清掃剤や消毒剤を使用する際は、製品のラベルに記されている説明書に従って使用すること。加えて、学校再開前に床や壁などを清拭するような大げさな清掃は不要である、なぜならこれによってインフルエンザの拡大を減らすために有用であるかどうかが不明であるからだ。

  登校停止となった生徒は、学校の外で大勢で集まらないようにすることが望ましい。もし保育施設が閉鎖し、保育が必要な場合、少数の家族で協力して計画を練り、親が仕事に出ている間に少数かつ同じ顔ぶれの乳児と小児に対してケアを提供する(毎日同じ人が世話をする)という環境を確保するのがよいであろう(研究によると、5人以下の子供しかいない保育環境の方が気道感染を減少させることが示唆されている)。

  感染者が出ていない地域の学校や保育施設は、学校閉鎖や保育施設閉鎖の可能性を考慮し準備を開始すべきである。これは教員、父母そして学校関係の必須の業務(給食サービスなど)の責任者に対して、緊急事態に備えた計画を作るよう要請することを意味する。地域内での感染の拡大に基づいて決定が極めて迅速に下される可能性があるので、父母は学校から帰宅させられた子供の面倒を誰が見るかということを検討しておくのが望ましい。

更なる情報は次のサイトを参照の事: http://www.cdc.gov/h1n1flu


(2009/5/9 IDSC 更新)

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