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台湾衛生署疾病管理局疾病対策センター発表

台湾の研究施設において感染したSARS確定例

(2003/12/17:原文



症 例
2003年12月17日に台湾で、44歳の男性研究者がSARSであることが確認された。
この患者は、台北の國防大学(國防医学院)予防医学研究所で働く上級研究官で、国家科学委員会の支援によって研究を行っていた。 彼はこの6月以来、台湾で唯一のP4実験室に
おいてSARSに関する研究を行っていた。

この症例はCI-661便で12月7日にシンガポールを訪れ、12月10日にCI-662便で台湾へ帰国した。彼は下痢が始まるまで、初期の症状および徴候から、インフルエンザに感染したものと思いこんでいた。彼はシンガポールから帰宅した夜に発熱し、その時の口腔内体温は38.5℃であった。それ以降自宅に留まっていた。12月16日の夕方に、救急車で三軍總醫院(Tri-Service General Hospital)急診室を受診し、胸部レントゲン写真によって右肺の肺炎が確認された。直ちにSARSが疑われ、SARSコロナウイルス検査のリアルタイムPCRとRT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)のための検体として、咽頭拭い、うがい液、血液が採取された。 三軍總醫院での検査結果はSARS―CoV陽性であった。受診から6時間後の12月17日早朝、さらに台湾疾病対策センター(台湾CDC)のウイルス学研究所で、最初の検査から2時間後に行われたこの患者の診断が確認された。

この症例は発熱のため、シンガポールから戻って以来勤務していない。接触者追跡調査は直ちに行われた。現時点まで彼の家族および同僚に発熱は見られていない。現在彼は和平醫院(Hoping Hospital)に転院し、隔離治療されている。

症例は実験室内感染が強く疑われる。今回のSARS―CoV感染は、9月のシンガポールの事例に続き、SARS研究に携わる研究者に起こった2番目の事例である。P4実験室における感染の理由は調査中であり、P4実験室の環境検体の採取も現在行われている。

接触者追跡調査手法
台湾CDCは以下の予防対策をこのSARS症例に対してとった:
1. 症例の家族4人と、共にシンガポールへ行った6人の同僚は現在、14日間の「自主健康管理」下に置かれている。
2. 12月7日に、同じCI-661便を利用しシンガポールへ向かった旅行者は、もし何らかの
症状・徴候があった場合に、地元の衛生局へ届け出なければならない。一方、12月
10日に台北へのCI-662便に乗り合わせた旅行客は、二次感染を防ぐために「自主健康管理」を行わなければならない。
3. 職場の密接な接触者は調査され、症例が研究に従事していた実験室は、より厳格な
バイオセーフティ手法をとるよう命じられた。
4. 彼の家族で12月10日以降に密接な接触があった者も、今後追跡調査され、「自主健康管理」の実行を強いられることになる。
5. 培養SARS―CoVを用いて実験を行っている研究施設はすべて調査され、政府により
バイオセーフティーが守られていることが保証され、承認されるまで、培養ウイルスを用いる研究のすべてを中止しなければならない。
6. この症例の自宅は、直ちに徹底した消毒を行うよう命令が出された。

レベルBにおける感染制御対策
台湾CDCでは、SARSの予防措置を、レベル 0,A,B,Cの4段階に分類している。SARSの最初の患者が確認されたためSARS予防対策の感染制御レベルは、SARS特別委員会により12月31日までの期間、「レベル 0(ゼロ)」 からより厳しい「レベルB(国内で第一例が出た場合)」へ引き上げられた。現時点で患者発生は限られているが、台湾CDCとしては一般の人々も下記の予防策を取るよう勧める;

I. 出入国時対策(2003年12月18日午前零時から導入):
  1. 「自主健康管理」と自宅隔離を行うよう求められた密接な接触者は、その期間中の国外旅行は許可されない。
  2. 発熱している旅行者は、病院からのSARSに感染していないという健康状態証明書によって証明されてはじめて出国が許可される。
  3. 航空会社は、旅客機搭乗員に対する厳格な発熱スクリーニングを行うよう求められている。
  4. 保健署の下の病院で働く医師が、発熱症例の管理を支援するために、中正国際空港
  (CKS:Chiang Kai-shek International Airport)と高雄国際空港(Kaohsiung International Airport)へ送られる予定である。
II. 「自主健康管理」と自宅隔離:
1. 密接な接触者は「自主健康管理」を行うよう命じられる。
2. 「自主健康管理」の期間中に発熱したが、保健当局によってSARS症例から除外
された者は、3日間の自宅隔離を行うよう命じられる。

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(2003/12/17掲載)

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