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2003/7/22

ガイドライン/その他 


病院の検査室での対応


(感染症情報センター)


 これまでに検体からSARSコロナウイルスに感染した検査担当者の報告はありませんが、臨床検体を扱う職員は、常に感染性微生物が検体中に含まれていることを想定して標準予防策(マスク、手袋、ゴーグル、ガウン・白衣の着用)などの個人的感染防御あるいは検査室レベルでの感染防御が重要であると考えます。もし何らかの事故でSARS疑いあるいは可能性例の患者さんの検体に感染防御なしに直接接触した場合は、その後10日間は発熱等、十分健康に注意し、もしこの間に異常があれば医療機関を受診することが必要です。

 患者血液および血清を対象とする検査室では、HBV、HCVおよびHIVなど感染防御に注意が必要な検体検査を日常的に実施されていると考えます。SARS患者さんの血清からどのくらいの感染性ウイルスが検出されるかの情報がないため、明確な回答はできませんが、病原微生物が陽性であるHBV、HCVおよびHIVなどの検体と同様の感染防御方法で検査を実施されていれば十分な感染防御に繋がると考えます。

(参考資料:MMWR Recommendations and Reports 50(RR11);1-42, 2001. Updated U.S. Public Health Service Guidelines for the Management of Occupational Exposures to HBV, HCV, and HIV and Recommendations for Postexposure Prophylaxis .)

 また、生化学検査で使用する検体は血清のみならず尿も検体として提出されますが、尿は発症10日頃のウイルス量が最も多く、患者さんの半数くらいにRT-PCR法でSARSコロナウイルスが検出されると言われています(感染性に関する情報はなし)。 このためSARS疑い例、可能性例の患者さんの尿検体についても血液検体と同様の感染防御方法で検査を実施して下さい。WHOの指針では、病院での検査室の対応はBSL2で行うこととされていますが、大型機器はBSL-2の安全キャビネットには入りませんので、病院毎に対応は異なると考えます。検査機器対策としては、測定時の検体あるいは検査機器からの排出物に防御なく直接触れることがないような対策が必要です。

 基本的に、エアロゾル発生の可能性のある処理(分注、攪拌など)はバイオセイフティキャビネット内で行うことが望ましく、また自動生化学分析器等の近傍などエアロゾルを発生させる可能性のある場所では、個人防護用具personal protection equipments: PPE(マスク、ゴーグル、手袋、ガウン、キャップ)を着用することが勧奨されています。

 以上のことより、SARS患者さんの検体に限らず、患者検体中には常に病原微生物の混入があると考えて標準予防策(スタンダードプレコーション)に務め検査を実施することが望まれます。(上記参考資料参照:MMWR Recommendations and Reports 50(RR11);1-42, 2001.)

 最も注意が必要であるのは、便および上下気道からの検体の検査を実施する時であると考えます。これらの検体の取り扱いには血液、尿以上に十分な注意が必要です。

 また、感染性微生物の混入が疑われる検体には色付きのラベルを付け注意を喚起する方法をとることも必要と考えます。

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