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2003/7/7

重症急性呼吸器症候群(SARS)−96



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(7月5日、更新第96報)


台湾(中国):最後に残った集団発生地域でSARS伝播が絶たれる


WHOは本日、台湾をSARSの「最近の地域内伝播」があった地域の一覧表から除く。この成果の達成は、すべての既知のSARSのヒト−ヒト感染の連鎖が、今や断たれたことを意味する。

「最後の既知の感染伝播の連鎖が台湾で断たれたことから、全世界は最初の安全の徴候に一息つくことができる」と、WHO感染症局長のDavid Heymann博士は述べた。彼はまた、「同時に、世界のどこかで依然として症例が発生する可能性が残っているため、公衆衛生の方面からは警戒を緩めてはならない。SARSは我々に、ひとつの症例でも爆発的に集団発生を引き起こす可能性があることを教えてくれた。」

「台湾は不運であった。あるひとつの病院での感染制御対策の緩みが、よく制御されていた集団発生の拡大を許してしまった。しかし当局はこれに迅速かつ適切に対応した。このように対応する間に、将来のどのような集団発生にも対応できるように対応力を強化した」とも述べた。

台湾から最後に報告された、そして現時点では世界で最後の「可能性例」は、6月15日に検知され、隔離された。今や新たな症例が検知されることなく、10日間の潜伏期の2倍の連続した期間が経過した。

このウイルスが、2月末に航空機による国際旅行のルートに沿って世界中を動き回り始めてから4ヵ月ちょっとで、この成果が達成された。

台湾における最初のSARSの症例は、54歳のビジネスマンで、2月の終わりに今ではSARSの初期の症例が発生していたことが知られている、中国広東省への旅行歴があった。このビジネスマンは3月8日に入院した。

結局台湾は、症例674例と死亡例84例を含む、記録上3番目に大きな集団発生に対処しなければならなくなった。特に大きな集団発生は中国本土と香港で起こり、症例と死亡例はそれぞれで、5,327例と348例、1,755例と298例であった。

最初の1ヵ月でわずか23例の「可能性例」が検知されたように、台湾での集団発生は当初ゆっくりと拡大した。これらの中には1例の医療従事者、すなわち前出のビジネスマンの配偶者を治療した際に感染した医師が含まれた。初期の症例のすべてが、直接にひとりのSARS患者との密接な接触歴、あるいは「最近の地域内伝播」が起こっていた地域への最近の渡航歴があった。初期の症例のうちわずかに4例が、台湾内での二次感染の結果発生した。

感染予防措置の緩みに伴って4月の中旬に、集団発生は拡大を始め、これによって疾患が医療施設内で、そしてさらに広く地域内へ急速に広がっていった。この後の緊急事態の対応として、保健当局は迅速に一連の一掃対策を導入した。サーベイランスシステムは改善され、即時かつ焦点を絞った対策の実施に必要な種類の情報を提供し始めた。院内感染対策は強化され、感染防御用具や他の必要な物品を効率よく供給するために、後方支援システムが開発された。

「大衆啓発」(mass education)のキャンペーンにより、発熱の有無を頻回にチェックし、即座に発熱クリニックへ報告するように一般大衆を説得し、協力を求めたが、これが症状の発生から患者の隔離までの期間を著しく短縮した。すべての関連部局の対策・対応を協調・調和させる機構を確立したことが、台湾での成功のもうひとつの鍵であった。

世界的なSARS集団発生は急速かつ劇的に展開し、あらゆる集団発生の場で医療スタッフや保健当局に対し、困難でストレスに満ちた要求を突きつけた。SARS封じ込めには、長期的に継続することが困難な、英雄的奮闘と特殊な対策が必要とされた。

「最後の既知のヒト−ヒト感染の連鎖の断絶は、ちょうど適切な時期に到来した。すべての主な集団発生地域の保健・医療システムは、その許容限界までの重い負荷が掛かっていた」と、Heymann博士は述べた。

WHOは引き続き、サーベイランスシステムがよく動いていることを示す、「可能性例」に関する未確認情報の報告を受け付ける。現在まで、最近報告された「可能性例」はすべて積極的に調査され、他の病因があることが確認されている。現時点の知見からは、疾患が再び流行ることを完全に否定はできないものの、今後続く2週間に新たな症例が検知されなければ、SARSコロナウイルスが本当に新しいヒト宿主の間から追い出されたことの自信を一層強めることができる。

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