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2003/7/11

重症急性呼吸器症候群(SARS)



SARSの集団発生は世界中で封じ込められた(抄訳)
(2003年7月5日、ジュネーブ)


WHOは、危機は依然として残っており、より多くの研究が必要であると言っている


世界保健機関(WHO)は本日、最後の症例が6月15日に隔離されて以来、潜伏期の2倍、20日の期間に渡り症例が発生しなかったことを受けて、最後に残っていた台湾を地域内伝播の一覧から除いた。

WHOはまた、世界はまだ「SARSフリー」になった訳では無いので、これによって警戒を緩めないように呼びかけた。WHO事務総長Gro Harlem Brundtland博士の弁を引用すると、「我々は本日“SARSの終息”を記したわけでは無く、“終息への一里塚”である、世界的集団発生の封じ込めが成功したのである」となる。彼はまた、関係者各位の計り知れない尽力と、この脅威のために犠牲となった多くの命についても言及し、喜びと共に再びこのような犠牲が出ないように警戒を続けるよう述べている。

SARSは世界30ヵ国を席巻したが、実際に深刻な被害を受けたのは6ヵ国であり、しかも拡大のパターンは類似している。輸入症例が入院し、医療従事者や入院患者が感染し、その接触者へと広がり拡大して行った。こういった地域では症例の20%を医療従事者が占めている。ヒトの社会から、まさに追い出されようとしている現在までに、SARSは8,439症例の感染を引き起こし、812症例を死に至らしめた。現在も200人余りがまだ入院中である。

この疾患には、まだ多くの謎が残されており、検知されていない症例がサーベイランスの目をくぐり抜けている可能性があるため、明日が今日のように平穏とは言えない。Brundtland博士はこのため、何度も、SARSに対して警戒を緩めてはいけないと繰り返した。

彼はまた、SARSは他のコロナウイルスのように、季節性流行をするのかもしれないし、起源が環境中にあり、そこからまた集団発生が起こるかもしれないし、ウイルスがまだ動物の間で巡回していてヒトに移るチャンスを狙っているのかもしれので、これらを解明するためには、SARSの科学的研究を継続する必要があるとも発言した。

具体的には、3つの緊急課題がある。ひとつ目は、インフルエンザのシーズンを控え、患者の鑑別ができるように、緊急に診断用の臨床検査法が必要である。現行のSARSの症例定義に当てはまる症例をすべて隔離していくとしたら、経済効率上も、医療資源の配分上も大きな問題となってくる。WHOはこれらについて、パートナー国と共に、集団発生後の症例の調査、管理、サーベイランスのプロトコールを作成中である。

二つ目の課題は、動物宿主の調査であり、起源を確認することで初めて将来的な集団発生の予防につながる。

三つ目は世界規模のデータベース作成である。疫学者や臨床家のSARSの理解を深める助けとなるように、また、治療効果の検討をするためにも、この作成は重要である。

再びBrundtland博士の言葉を引用すると、「SARSは我々に対する警告であり、現在の最も発達した公衆衛生システムでさえ極限まで破綻寸前まで追い込まれたことを見ても、今後の感染症の到来に備えるため、今こそ本格的に見直しを行う時期であることを教えている。我々に残された時間は、とても少ないかもしれないので、早急に実行に移し時間を有効に活用しなくてはならない」ことになり、基盤整備、人材育成、特に疫学者や公衆衛生専門家の養成が重要である。サーベイランスの強化、それに基づく適切な系統的対応の確立や、報告システムの世界的なリンクの設立、院内感染の対策強化の必要となる。

SARS のhomepage [感染症情報センター:緊急情報] を参照

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