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2003/7/10

重症急性呼吸器症候群(SARS)



WHOが非定型肺炎の症例に関して世界的警報を発令
(2003年3月12日、ジュネーブ)


2月以来、WHOはベトナム、香港中国特別行政区、中国広東省における重症型肺炎の集団発生の報告について確認するために、積極的に活動してきた。

ベトナムではこの集団発生は、原因不明の重症な急性呼吸器症候群の治療のために入院した、ひとりの発端者から始まった。彼は旅行中に具合が悪くなり、中国の香港特別行政区から上海を経て、ハノイへ到着後直ぐに発病した。彼の入院に引き続き、およそ20人程度の病院スタッフが同様の症状で発病した。

ハノイにおけるこの疾患の徴候と症状は、初期のインフルエンザ様症状(突然の高熱に続く筋痛、頭痛、咽頭痛)である。これらは最も一般的な症状である。初期の臨床検査には、血小板減少(低血小板数)と白血球数減少(低白血球数)が含まれることがある。すべての症例ではないが幾人かでは、この様な検査値に続いて両側の肺炎が見られ、そのうちの数例では急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に進行し、レスピレータによる人工換気の介助を必要としている。患者の中には回復へ向かっている者もいるが、危篤状態のままの者もいる。

香港特別行政区の衛生署は本日、公立の病院のひとつで呼吸器疾患の集団発生が起こったことを報告した。3月11日の深夜の時点で、50人の医療従事者の検診が行われ、23人が発熱症状を呈していることが分かった。予防的措置として、彼らは経過観察のために入院となった。この集団のうち8人は、胸部レントゲン撮影で肺炎の早期徴候を示した。全員の臨床状態は安定している。このほかに3人の医療従事者が、発熱のために自主的に病院を受診し、このうち2人に胸部レントゲン撮影で肺炎の徴候があった。

香港特別行政区の公衆衛生当局による調査は現在も続けられている。醫院管理局(Hospital Authority)は、院内でこの疾患の感染が拡大するのを防止するため、感染制御対策を強化した。これまでのところ、症例とハノイでの集団発生の間に関連は見つかっていない。

2月の中旬に中国政府が5人の死亡例を含む、305例の非定型肺炎の症例が広東省で発生したことを報告している。死亡例のうち2例に、クラミジア感染が見つかっている。集団発生の原因に関する詳細な調査は現在も継続されている。総括的に見て、ハノイと香港特別行政区の集団発生は病院内の環境に限定されているように見える。疾病罹患のリスクが高いのは、患者を治療・看護しているスタッフであるように見える。

ハノイ、香港の急性呼吸器疾患の集団発生と、香港特別行政区で2月19日に報告されたトリインフルエンザA(H5N1)の集団発生の間には、まったく関連が認められていない。さらに調査が続けられ、ベトナムと香港特別行政区からの患者検体の検査は日本と米国のWHO協力センター(WHO collaborating center)で検査が行われている。

これらの集団発生の原因がもう少し分かって来るまで、WHOはこの集団発生と関連していると考えられる非定型肺炎の患者を隔離し、バリアー・ナーシング(感染防御措置を取った)手法で看護するよう提言する。同時に、疑わしい症例はすべて、各国の保健当局へ報告するよう推奨する。

WHOは関連各国当局の密接に連絡をとっており、疫学、検査、臨床における支援の提供を申し出ている。WHOは各国当局と共に、これらの集団発生の適切な調査、報告、封じ込めを確実に行うように努力している。

さらに詳細な情報は下記にお問い合わせください:
  Dick Thompson
  Communications Officer,
  Communicable Disease Prevention,
  Control and Eradication WHO, Geneva
  Telephone: +41 22 791 2684
  Email: thompsond@who.int

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