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重症急性呼吸器症候群(SARS)



世界保健機関(WHO)が緊急旅行勧告を発令
(2003年3月15日、ジュネーブ)


最近数週間の内に、WHOは150以上の新たな重症急性呼吸器症候群(SARS)を疑わせる症例の報告を受けた。SARSは原因不明の非定型肺炎である。本日までのところ、カナダ、中国、香港中国特別行政区、インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムから報告を受けている。米国のニューヨークを発って、ドイツのフランクフルトに到着した具合の悪い患者とその同行者たちが、本日早暁に機体から降ろされ、隔離のために病院へ搬送された。

SARSが短期間に数カ国へ広がったため、WHOは本日、旅行者と航空会社を対象とした、緊急旅行勧告を発表した。

「このSARSという症候群は今や世界的な脅威である。世界中が協力してその原因を究明し、病気の者を治し、拡大を止めなければならない」と、世界保健機関(WHO)の事務総長であるGro Harlem Brundtland博士は述べた。

現在いかなる渡航目的地に対しても、渡航制限の勧告は出されていない。しかしながら現在WHOは、各国政府、旅行会社、医師、旅行者からの問い合わせに対して、旅行者、航空会社乗務員、航空会社への指針を提供している。この感染症の正確な特性はまだ調査中であり、この指針はWHOが入手できた初期の情報に基づいている。

乗務員を含む旅行者:すべての旅行者はSARSの症状と徴候に気を付けなければならない。これには以下のようなものが含まれる:

  高熱(摂氏38度以上)

   且つ

  咳嗽、息切れ、呼吸困難を含む、ひとつ以上の呼吸器症状

   且つ

  以下のひとつ以上:

SARSと診断された人と密接な接触*があった

SARSが報告されている地域への最近の旅行歴がある
旅行者がこの組み合わせの症状を満たすような、余り起こらない事態が生じた場合には、医療機関を受診すべきであり、その際には医療従事者へ、最近の旅行歴に関する情報を必ず伝えることが重要である。上記の症状を発症した旅行者はすべて、回復するまで旅行を中止することを勧奨する。

航空会社:機内に上記の条件を満たす乗客あるいは乗務員がいる場合には、航空機から到着地の空港へ緊急連絡をしなければならない。発症者は到着時に、状態の評価と管理のために空港保健当局へ受診することが必要となる。この旅客機の搭乗客と乗務員には、SARS疑い例として患者の状態の情報提供をしなくてはならない。乗客と乗務員はこの日に続く14日間のすべての接触者の詳細情報を、空港保健当局へ提供する必要がある。現在のところ健康状態に問題の無い乗客に関しては、旅程の中止の必要性を示唆するものは何も無いが、上に示された症状を発症した場合には、すべての搭乗客と乗務員は医療機関を受診することが推奨される。現状では、発症しない限り乗客、乗務員への予防的投薬や検査の適用は無い。

この疾患を引き起こしている病原体に関する明確な情報が無い状況では、航空機へ取るべき特別な処置に関しての提言を行うことはできない。一般的な予防的措置として、WHOの “Guide to Hygiene and Sanitation in Aviation”に解説している手法に従い、航空機体を消毒することが考えられる。

* * *
更なる情報が得られたことにより、WHOの推奨するSARSの症例定義は以下のように改定された。

疑い例(Suspect Case)
平成15年2月1日以降に以下の症状を示して受診した者:
  ・高熱(38℃を超える)
    と
  ・咳嗽、息切れ、呼吸困難などを含む、ひとつ以上の呼吸器症状

可能性例(Probable Case):
  ・SARSと診断された人と密接な接触*があった
  ・SARSの報告がある地域への最近の旅行歴
疑い例の所見に加え、疑い例で胸部レントゲン写真に肺炎の所見があるか、RDSの所見があるもの

あるいは

死亡につながった原因不明の呼吸器疾患の患者で、病理解剖結果で原因が特定できないRDS所見を示していたもの

コメント
SARSは発熱と呼吸器症状に加え、頭痛、筋硬直、食欲低下、消耗、混迷、発疹、下痢などを含むその他の症状を伴うことがある。
* * *
WHOは、この集団発生について更に知見が得られるまで、SARSの患者に対し、隔離とバリアー・ナーシングの手法をとり、臨床的に有効性が示唆されている治療法を採用することを推奨する。WHOはまた同時に、すべての疑い例を各国の保健当局へ報告することを勧告する。

WHOは世界中の国家機関と密接な連携を保っており、疫学的又検査や臨床上の援助も提供している。WHOは各国家機関と共に、この集団発生に対する的確な調査や報告、そして封じ込めを確実に行うために協力している。

*密接な接触(Close contact)とは、SARS患者の看護をした、同居していた、又は患者の気道分泌物や体液に直接接触したことを言う。

さらに詳しい情報が必要な方は以下に連絡してください:
Dick Thompson
Communication Officer Communicable Disease Prevention,
Control and Eradication WHO,
Geneva
Telephone: (+41 22) 791 26 84
Email: thompsond@who.int

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