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2003/7/4

重症急性呼吸器症候群(SARS)−94



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(7月3日、更新第94報)


SARSで変わった世界の次のインフルエンザシーズンへの対策


SARSによって引き起こされた世界的な公衆衛生上の緊急事態が終わりに近づくにつれ、インフルエンザ症例が「SARSの疑惑」を生じ易い時期である、次のインフルエンザシーズン中に起きると思われる問題点へと注目が集まりつつある。WHOは、SARSの季節的な再流行への警戒が特に重要なその時期に、高い感度で症例の可能性を疑うよう勧奨しているため、この問題は主要な懸念材料である。

SARSウイルスの動向は、現在の知見からは予想不可能であるが、ウイルスによる呼吸器感染症には、気温と湿度が上昇したときに死に絶え、その後気候が涼しくなってまた戻ってくる傾向があることがよく知られている。

一般的に季節的流行の間に世界中で、全人口の10〜20%がインフルエンザに罹患し、その結果、300万〜500万の重症例と25万〜50万の死亡がでている。

SARSのようにインフルエンザは65歳以上と、すでに慢性疾患に罹患している人の間で最も致死率が高いことが知られている。

重症例では肺炎を含むこともあるインフルエンザの症状は、SARSのそれと混同し易い。したがって、世界中の保健・医療システムがSARS「疑い例」や、その密接な接触者の隔離、接触者追跡調査、検疫といった費用がかかり、社会的に負担の大きな対策の必要から、過負荷になる可能性のリスクは非常に大きい。

疾病の初期段階でSARSを除外し、こうした対策の必要性を取り除く、迅速で簡易な診断検査が存在しないために、より負担が重くなっている。

このような理由からWHOはすべての国に、少なくともインフルエンザとSARSの両方への罹患リスクが高い医療従事者に対して、WHOが推奨するインフルエンザワクチン(日本語/抄訳)で予防接種を行うように強く提言する。可能であるならば、特に施設内で介護を受けている高齢者や、慢性の心血管系疾患の患者を含む、そのほかの疾病の感染リスクがある人々にも、ワクチン接種が行われるべきである。

WHOは112のインフルエンザセンターのネットワークを維持し、流行中のインフルエンザ株に関する情報と疫学的傾向に関する情報を収集している。このネットワークは、毎年の推奨ワクチンの構成成分を提唱する以外に、次のインフルエンザの世界的流行の開始を知らせる、インフルエンザの変異株と新種の出現の早期警報システムを運営している。

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