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2003/6/26

重症急性呼吸器症候群(SARS)−88



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月25日、更新第88報)


中国と日本で新規症例の報告


WHOは本日、中国と日本から新たなSARS「可能性例」の報告を受けた。

中 国
中国保健署は本日、新たなSARS「可能性例」を1例、広東省で発症した77歳の女性であるが、報告した。この症例は、先にWHOの勧告に従い「疑い例」として分類され、6月3日に隔離されていた。

この症例は、5月17日以来初めて広東省で報告された新規症例である。中国本土からの最後の新規症例は6月11日に報告されていた。

WHOは、これが「疑い例」から「可能性例」への分類の変更であること、したがって、地域内伝播が起こった証拠だと受け止めるべきではないと強調している。WHOはこの症例と、その感染源と曝露の時期の特定を可能にするような、既に報告されている「感染伝播の連鎖」との繋がりに関する詳細な追加情報を待っている。

6月の始めに発症したこの症例について最も考えられる説明は、その後断たれた感染伝播の連鎖に関連しているだろうということである。

香港当局により保存されていた非常に詳細な記録によって、この女性が5月20日と21日の両日、香港で入院して治療を受けていることが分かった。彼女の病室がSARS患者のそれと同じ病棟に在ったことから、6月1日まで健康状態のサーベイランス下に置かれていた。最大潜伏期間のこの期間中には、SARSの症状の発症は無かった。

しかしながら、この時点で香港の病院との関連の可能性を、完全に否定することはできない。今週のSARSの世界会議において明らかになったように、この疾患は高齢者において、特に他の疾患の治療を同時に受けている場合には、必ずしも予測可能な臨床経過を取らない。

昨年の11月中旬にSARSの最初の症例が発生した広東省は、6月13日に、「最近の地域内伝播」があった地域の一覧から削除された。この遡っての、新たに「可能性例」と分類された症例の報告は、広東省の現状に何ら変更をもたらす理由にはならない。

日 本
日本の厚生労働省は本日、SARSの「可能性例」で、6月21日に東京へ観光のために到着し、その2日後に発症した33歳の男性を報告した。彼はWHOの勧告にしたがって、直ちに入院管理されている。

初期の診断検査で、他のより一般的な重症の呼吸器疾患の原因は否定されている。更に詳細な検査が現在行われており、疫学的調査も開始されている。患者が台湾在住者であることから、台湾当局者も調査に協力している。

新規症例に関するコメント
依然高い警戒を行っている間に集団発生が収束して行く場合には、常に数例の追加症例が検知される。それらの迅速な報告によって、またサーベイランスシステムが警戒体勢にあることが確認できる。しかしながら、WHOは集団発生のこのような時期に報告される多くの症例が、さらに調査を進めると「雑音」で在ることが多い。すなわち、SARSウイルス以外の病原体による市中肺炎の症例である。

大きな集団発生を経験し、そのため症例の臨床および臨床診断経験の豊富な蓄積がある地域では、新たに検知された「可能性例」がその後の調査により取り下げられることは少ない。

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