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2003/6/25

重症急性呼吸器症候群(SARS)−87



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月24日、更新第87報)


WHOが最後まで残っていた中国の北京への旅行勧告を変更


世界保健機関(WHO)は本日、中国の北京への、「どうしても必要な旅行」以外の渡航を延期するべきであるという勧告を取り下げる。北京は、依然この勧告が適用されていた世界で最後の地域であった。

「どうしても必要な旅行」以外の、北京への渡航は延期することを検討するようにという勧告は、重症急性呼吸器症候群(SARS)の国際的な拡大を最小限に抑えるために、4月23日に出された。WHOは、中国の首都における状況が現在著しく改善したために、この勧告を変更する。北京での最後の新規症例は、5月29日に隔離されており、その後数例のSARSと疑われる症例があったがすべて否定された。最近北京から輸出された症例は無く、最近の症例はすべて既知の感染伝播の一連の繋がりへ遡ることができた。

「本日6月24日、木曜日をもって、北京への旅行勧告を変更する。北京は、WHOが人々に「どうしても必要な旅行」以外の渡航を延期するべきであると勧告していた最後の地域である。これは非常に良いニュースで、世界がSARSの封じ込めに向けて、大きな進展をしたことを表している」と、WHO事務総長Gro Harlem Brundtland博士は発表した。

北京では、累積の「可能性例」が2,521例、死亡者が191例と、世界中で最大のSARSの集団発生が発生した。香港が累積症例数1,755例、死亡者が296例、中国の広東省が累積症例数1,511例、死亡者57例で、これに続いている。

未だに理由が完全には解明されていないが、中国本土では、他の集団発生地区のほとんどの場合より低い致死率が見られた。

中国は北京が29症例と4死亡例を報告した4月の始めに、SARS症例の毎日報告を開始した。集団発生がピークに達した4月の終わり近くには、北京は毎日100例以上の新規症例を報告していた。このような規模の集団発生が、政府の積極的取り組みの支援を受け、隔離、接触者追跡調査、検疫などを含む、数世紀もの前の古い感染制御対策の効果により封じ込められたことは讃えるべきことである。

旅行延期の勧告は、SARS「可能性例」数の多さ、最近の地域内での感染伝播の様式、最後に症例が「輸出」された日付などを含む、いくつもの要因を考慮して出されてきた。

3月27日にWHOは、「最近の地域内伝播」があるすべての地域は、海外への出国者全員をスクリーニングし、SARSの症状を呈している者や、最近SARS症例に接触した者が確実に渡航しないようしなければならないと勧告した。これ以降、旅行者に危険を及ぼす可能性のあるSARSの大きな集団発生が起こっている地域へは、「どうしても必要な旅行」以外の渡航を延期するべきであるとする勧告がいくつも出されてきた。

今や北京で最後の新規症例が隔離されて以来、20日を超える日数が経過した。したがって、北京は「最近の地域内伝播」がある地域の一覧からも削除された。

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