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2003/6/19

重症急性呼吸器症候群(SARS)−82



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月17日、更新第82報)


台湾に対する旅行勧告変更

WHOは本日、台湾(中国)を、旅行者に対して「どうしても必要な旅行」以外を延期するように勧告する地域の一覧から削除した。この変更は、症例の検知、感染制御対策、接触者の追跡調査と経過観察などが著しく改善し、毎日の新規症例数の急速な減少に結びついたことに引き続いて出された。

「台湾において、このSARS危機はすべてのレベルで非常に深刻に受け止められている。SARSは広範な非常に急速な保健基盤の改善、特に院内感染対策法、情報の収集と報告のシステム、一般の人々の動員、集団発生対応に関与するすべての機関の協調などの領域における改善を促進した。これらの改善が、恒久的なものであることを期待している」と、対応強化の必要性に関する評価のために、5月に台湾へ赴いたWHOのウイルス学者であるCathy Roth博士は述べている。

たった一例の輸入症例や感染予防対策の緩みが、再び集団発生を引き起こす可能性があるため、WHOは、SARSの地域内伝播を経験した地域はすべて、高いレベルの警戒を維持することを勧奨している。

旅行勧告の解除は幾つかの要素を考慮に入れ決定される。これらの要件には現在のSARS症例数、一日あたりの新規の報告症例数、地域内の感染伝播の様式、もはや輸出例が無いことを示す証拠などが含まれている。新規症例のスクリーニングや接触者の追跡調査と経過観察を含めた、サーベイランス方法の妥当性も考慮される。これらの要素は総合的に、地域の住民もちろん旅行者においても、医療現場のような限定された環境以外における感染のリスクを判断するのに役立つ。

台湾は記録上3番目に大きな集団発生を経験したが、始めは全員ヒト−ヒト感染の連鎖で明確に関連づけられた2〜3例の輸入症例しかいなかった。院内での感染制御対策の緩みに伴い、集団発生は劇的に規模を拡大し、5月の中旬には1日に70例もが報告されるようになった。この様に多数の新規症例が毎日報告された一因としては、調査中であった多数の症例の蓄積があったためでもある。

WHOは引き続き中国の北京への旅行を計画している者に対し、「どうしても必要な旅行」以外を延期するように勧告している。これ以外に、旅行に関連した勧告は現在出ていない。

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