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2003/6/18

重症急性呼吸器症候群(SARS)−81



WHOによる重症急性呼吸器症候群(SARS)
多国同時集団発生の報告
(6月16日、更新第81報)


SARSに関するWHO科学会議が明日から開催

第一回のSARSに関する世界会議が明日、マレーシアのクアラルンプールで開催される。WHO主催のこの会議は2日間に渡り開催され、集団発生の開始時からSARSの調査と対応の最前線にいた専門家らを含む、1,000人以上の科学者および臨床医が参加する予定である。

会議を企画するに当たって、WHOは今日までの対策の有効性や、近い将来のあるいは長期の双方の視点から予測されるSARSの展開に関する専門家の意見を集めようと考えている。さらに調査を必要とする領域の優先順位を明らかにすることが、この会議のもうひとつの目的である。

今回の会議は、当初の集団発生を封じ込めるために必要であった、昼夜を問わない厳しい緊急対応にゆとりが出始め、集積していた実際の事例を評価し、知識の欠けている部分を明らかにする時間的余裕を得た、この時期に開かれることとなった。

SARS対応は初めの頃から、前例のない高度な科学的協力という特徴があり、これが起因病原体である新型コロナウイルスを1ヵ月で同定することに繋がった。しかし、多くの基本的な科学的疑問が残っており、信頼性があり臨床的に有用な診断検査もまだ無く、有効な治療方法も特定されていない。十分な知見も、感染対策の手法も無い状況でのSARS対応は、数世紀も古い手法、すなわち隔離と検疫、そして渡航制限に頼らなくてはならなかった。

会議の初日には招聘講演者らが、SARSの臨床像、起因病原体、感染伝播の様式、感染制御対策の有効性、可能性のある動物宿主などについて、現在分かっていることの総括を行う予定である。なぜ、幾人かの患者の病状が急速に悪化して行き、他の人は自然に回復して行くのか、小児においては比較的に病状が軽いのか、特定の症例が特に急速な感染拡大の原因になるのかなどを含めた、この疾患の多くの疑問点のうちの幾つかに重点を置いて議論される予定である。このほかに、動物宿主の存在の可能性や、メトロポール・ホテルと淘大花園(アモイ・ガーデン)集合住宅での集団発生中に見られたような、環境中の感染源の重要性などが未解明の問題点である。

血液製剤の安全性と感染源として可能性がある動物に関する発表は、新たな、重症な、余りよく知られていない疾患によって引き起こされた不安が広範にわたっていることを示唆している。

二日目は、現在進行中のSARS対策、また流行を起こす可能性のある他の疾患への対策の評価において、重要であると考えられる数々の質問に答えるように、ワーキング・セッションを中心に構成されている。これらの質問には、現在の感染制御対策の有効性や、集団発生の警報と対応を行うための公衆衛生基盤の妥当性に関するものが含まれている。

ワーキング・セッションはまた、SARSの制圧を不可能にするかもしれない技術的制約についても検討する。

これら様々な事項に関して世界第一線の専門家の意見を集約することにより、WHOは、より的確な感染制御対策の提言と、(封じ込めの)成功の可能性が最も大きい、長期のSARS対応の計画立案のための、科学的根拠を確立することを期待している。

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